・・・資本輸出、租借、商品販売の場合の欺瞞、支配的国民の下に隷従させらるゝこと等によって。」 資本家は、国内の労働者から搾取した利潤以外に、こうして、植民地から莫大な利潤をかき集めてくる。この有りあまって、だぶついている金で彼等は、労働貴族や・・・ 黒島伝治 「反戦文学論」
・・・米と株券と商品の相場は、刻々に乱高下している。警察・裁判所・監獄は、多忙をきわめている。今日の社会においては、もし疾病なく、傷害なく、真に自然の死をとげうる人があるとすれば、それは、希代の偶然・僥倖といわねばならぬ。 実際、いかに絶大の・・・ 幸徳秋水 「死刑の前」
・・・の中が一日も速く来らんことを望むのである、が、少くとも今日の社会、東洋第一の花の都には、地上にも空中にも恐るべき病菌が充満して居る、汽車・電車は、毎日のように衝突したり人を轢いたりして居る、米と株券と商品の相場は、刻々に乱高下して居る、警察・・・ 幸徳秋水 「死生」
・・・子供の片言でも、商品の広告文でも、法律の条文でも、幾何学の定理の証明でもそうである。ピタゴラスの定理の証明の出て来る小説もあるのである。 ここで言葉というのは文字どおりの意味での言葉である。絵画彫刻でも音楽舞踊でも皆それぞれの「言葉」を・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・しかし、いずれの場合にしても、例えばある会社の研究員が、その会社の商品の欠点を仔細に研究して、その結果からその商品の無価値あるいは有害なことを発見したとする。その際もしも、その研究員が、更に進んでその欠点を除去し、その商品を完成するように研・・・ 寺田寅彦 「学問の自由」
・・・ちょうどいろいろな商品のレッテルを郭大して家の正面へはり付けたという感じである。考えようではなかなか美しいと思われるのもあるがしかしいずれにしても実に瞬間的な存在を表象するようなものばかりである。このような珍しい現象の記録をそれが消えない今・・・ 寺田寅彦 「カメラをさげて」
・・・ 元来教育映画は骨の折れる割合に商品価値の低いものである以上、現在日本の映画会社では到底手をつけないであろうから、どうしても政府の事業としてやる外はないと思われる。しかし現在我邦の政府で映画教育の価値がほんのわずかしか認められていないと・・・ 寺田寅彦 「教育映画について」
・・・陳列されてある商品全部が自分のもので、宅へ置ききれないからここへ倉敷料なしのただで預けてあると思えば、金持ち気分になりすますことも容易である。入用なときはいつでも「預かり証」と引き換えに持って帰ることができるのである。ただ問題は、肝心の時に・・・ 寺田寅彦 「銀座アルプス」
・・・これを利用して似寄った名前の偽似商品を売るのもある。 たとえばゴルフの大家梅木鶴吉という人があるとする。そうして書店の陳列棚に「ゴルフの要訣、梅本鶴吉著」という本があったとすると、十人が九人まで「本」を「木」と読んでその本を買って来る・・・ 寺田寅彦 「錯覚数題」
・・・もっともステッキに限らず大概の国産商品がそうであり、ちゃんとした器械類でさえも長持ちのするのは珍しい。ステッキが用のない人のぜいたく品ならば、なるべく早くいけなくなって、始終新しく取り換えるほうがいいかもしれない。実際新しいステッキを買うと・・・ 寺田寅彦 「ステッキ」
出典:青空文庫