・・・土に埋めるだな、土葬にしべえ。(半ばくされたる鯉の、肥えて大なるを水より引上ぐ。客者引導の文句は知らねえ。怨恨あるものには祟れ、化けて出て、木戸銭を、うんと取れ、喝!(財布と一所に懐中に捻じ込みたる頭巾に包み、腰に下げ、改って蹲はッ、静御前・・・ 泉鏡花 「山吹」
・・・ 棺の窮屈なのは仕方が無いとした所で、其棺をどういう工合に葬むられたのが一番自分の意に適っているかと尋ねて見るに、先ず最も普通なのは土葬であるが、其土葬という事も余り感心した葬り方ではない。誰れの棺でも土の穴の中へ落し込む時には極めてい・・・ 正岡子規 「死後」
・・・山田にては土葬するもの少く、多くは荼毘するゆえ、今も死人あれば此竈を使うなり。村はずれの薬師堂の前にて、いわなの大なるを買いて宿の婢に笑わる。いわなは小なるを貴び、且ところの流にて取りたるをよしとするものなるに、わが買いもてかえりしは、草津・・・ 森鴎外 「みちの記」
出典:青空文庫