・・・の中に短く圧縮した表現で書いている。「私は――泣かなかった。唯――思い出す――まるで氷の風で私は捉えられたようだった」と。祖母がどんなに心から賢く、「すべての人々にとっての母であったかということについて」ゴーリキイは誰かに語りたいという切な・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ 歴史の圧縮された二重の性格を貫いて、人民生活の安定を可能とする方向として人民的な民主主義という、第二次大戦後の新しい歴史的環がつかまれるのである。「真夏の夜の夢」は、まだきょうほどせっぱつまらなかった戦後の懐中に応じて、非常に好評・・・ 宮本百合子 「真夏の夜の夢」
・・・しかし、肝心のそのひかれる心の生々しさ、感じてゆく過程にいわばその人の生涯が圧縮されて内容づけられていること、人間はその心で自分たちの地球を今日の常識が理解しているところまでの現実性で我々の社会へもたらしたのであったということはめったに語ら・・・ 宮本百合子 「山の彼方は」
出典:青空文庫