・・・後にコペルニカスの地動説が出て前説よりも遥かに簡単に天体の運動を説明し得る事が分り、ケプレル、ニュートンを経ていよいよ簡単な運動の方則で天体の諸現象を述べ尽す事が出来た。しかし今日ではある簡単な問題を考える場合には依然としてプトレミーの考え・・・ 寺田寅彦 「方則について」
・・・コペルニカスの地動説が真理であろうが、トレミーの天動説が真理であろうが、そういうことは何方でもよい。徳行の点から見ても、宗教は自ら徳行を伴い来るものであろうが、また必ずしもこの両者を同一視することはできぬ。昔、融禅師がまだ牛頭山の北巌に棲ん・・・ 西田幾多郎 「愚禿親鸞」
・・・何故なら、すべての近世科学の歴史は、たとえばガリレイが十七世紀の地動説をとなえたとき、宗教裁判で罰せられ生命さえ脅かされた事実をつげている。 しかし、地球は動いているものであったから、その事実はガリレイの死後にやがては承認されることとな・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・星を観測して地動説をとなえたガリレイが、そういう固定観念にぶつかって、生命の危険におびやかされたことを、今日の若い娘たちは、あらまアと彼のために同情し当時の権力の暗愚を憐みまた笑うだろう。 太古のエジプト人たちは、人間の生命は息と眼の中・・・ 宮本百合子 「幸福の感覚」
出典:青空文庫