「モップル」が、「班」組織によって、地域別に工場の中に直接に根を下し、大衆的基礎の上にその拡大強化をはかっている。 ××地区の第××班では、その班会を開くたびに、一人二人とメンバーが殖えて行った。新しいメンバーがはいって・・・ 小林多喜二 「疵」
・・・いつか、私の高等学校時代からの友人が、おっかなびっくり、或る会合の末席に列していて、いまにこの辺、全部の地区のキャップが来るぞと、まえぶれがあって、その会合に出ているアルバイタアたちでさえ、少し興奮して、ざわめきわたって、或る小地区の代表者・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・当時都下の温泉旅館と称するものは旅客の宿泊する処ではなくして、都人の来って酒宴を張り或は遊冶郎の窃に芸妓矢場女の如き者を拉して来る処で、市中繁華の街を離れて稍幽静なる地区には必温泉場なるものがあった。則深川仲町には某楼があり、駒込追分には草・・・ 永井荷風 「上野」
・・・今日三百万の党員をもち中国人口の三五パーセントを解放地区に包括しつつある中共は、一九二三年に第三次党大会をもち、そのとき党員は四〇〇名であった。「古き小画」の作者は、これらのすべてについて全く知らないか、或はごく部分的に、ブルジョア新聞・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・そこからぬけ出しようのないばかりか、悪化してゆく貧困にしばりつけられた人々の生きている地区だった。尨大な数の不幸な人々と、顔色のわるい、骨格のよわいその子供たちとが、自分たちの運命をきりひらくために勇奮心をふるい起そうともしないで、波止場の・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第八巻)」
・・・更には、存在の無意義さによって解消しつつある厚生省が、社会施設として、それぞれの地区の住民に欠くべからざる托児所、子供の遊場をこしらえる力さえなかったことに向って、警告が与えらるべきであったと思う。日本婦人協力会というような、戦争協力者の集・・・ 宮本百合子 「石を投ぐるもの」
・・・――御参考までに○ 婦人民主クラブ役員改選のこと 来る六月十三日の会合で、多分役員改選が議題にのぼるでしょう 今まで発企人のいすわり常任幹事でしたが幹事全体と地区の代表のような人でセンコウ委員を選んで そこからのスイセンコー・・・ 宮本百合子 「往復帖」
・・・一九三三年の夏、わたしは、幾度か荏原の労働者地区にあった無産者托児所へゆきそのぐるりのお母さんたちの生活にふれた。職場の人々との会合の、字では書いておくことのできなかった記録を整理した。そして八九十枚まで、小説としてかきはじめた。 とこ・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・お母さんが病気をしたり姙娠した場合は、働いている人の妻であり、勤労者の妻である、組合員の妻であるということで、組合から地区の病院、産院、或は健康相談所でもって癒して貰える、姙娠すればちゃんと四ヵ月手当がついて休暇も貰える、娘が結婚すればそれ・・・ 宮本百合子 「社会と人間の成長」
・・・「地区の人々」「転換時代」について、われわれの学ぶところもそこであると思う。例えば、「地区の人々」をよんで、読者諸君はあの作品が従来の同志小林の作品に比べて、大変落付きがあり、文章にまでも大らかな確乎性が漲りはじめていることを感じたであ・・・ 宮本百合子 「小説の読みどころ」
出典:青空文庫