・・・大垣米原間の鉄道線路は、この顕著な「地殻の割れ目」を縫うて敷かれてある。 山の南側は、太古の大地変の痕跡を示して、山骨を露出し、急峻な姿をしているのであるが、大垣から見れば、それほど突兀たる姿をしていないだろうという事は、たとえば陸地測・・・ 寺田寅彦 「伊吹山の句について」
・・・そのほんとうの原因的機巧はまだよくわからないが、要するに物理的には全くただ小規模の地震であって、それが小局部にかつ多くは地殻表層に近く起こるというに過ぎないであろうと判断される。 もし「孕のジャン」として知られた記録どおりの現象が、実際・・・ 寺田寅彦 「怪異考」
・・・例えば火山の噴火を示すのでも本当に子供だましの模型や如何わしい地殻断面図の行列であって、一つも現象の科学的な要点に触れていなかった。また例えば子供の誤って呑込んだおはじきが消化器系を通過する径路を示すのを見たが、これなどでも消化器というもの・・・ 寺田寅彦 「教育映画について」
・・・ほど明確な単独性をもった個体と考えてよいか悪いかさえも疑いがある、のみならず、たとえいわゆる震源が四元幾何学的の一点に存在するものと仮定しても、また現在の地震計がどれほど完全であると仮定しても、複雑な地殻を通過して来る地震波の経路を判定すべ・・・ 寺田寅彦 「地震雑感」
・・・ 実験室における割れ目の問題が地殻に適用されるとなると、そこには地質学や地震学の方面に多大な応用範囲が見いだされる。これに関してはかえって地質学者の多くが懐疑的であるように見えるが、物理学者の目から見れば、この適用は、もし適当な注意のも・・・ 寺田寅彦 「自然界の縞模様」
・・・ 地震が如何にして起るやは今もなお一つの疑問なれども、ともかくも地殻内部における弾性的平衡が破るる時に起る現象なるがごとし。これが起ると否とを定むべき条件につきては吾人いまだ多くを知らず。すなわち天気の場合における気象要素のごときものが・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
・・・それは地震の波が地殻を伝播する時に、陸地を通る時と海底を通る時とでその速度に少しの相違がある、そういう事実を説明すべき一つの理論の糸口のようなものであった。 とにかく一生懸命で絵を描いている途中でどうしてこんな考えが浮き上がって来たもの・・・ 寺田寅彦 「断片(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・それは同一地域の三角測量や精密水準測量を数年を隔てて繰り返し、その前後の結果を比較することによってわれらの生命を託する地殻の変動を詳しく探究することである。近着のアメリカ地理学会の雑誌の評論欄にわが国の地球物理学者の仕事を紹介してあるその冒・・・ 寺田寅彦 「地図をながめて」
・・・そうしてその増加率は年とともに増すとすれば遠からず地殻は書物の荷重に堪えかねて破壊し、大地震を起こして復讐を企てるかもしれない。そういう際にはセリュローズばかりでできた書籍は哀れな末路を遂げて、かえって石に刻した楔形文字が生き残るかもしれな・・・ 寺田寅彦 「読書の今昔」
・・・このような地質的多様性はそれを生じた地殻運動のためにも、また地質の相違による二次的原因からも、きわめて複雑な地形の分布、水陸の交錯を生み出した、その上にこうした土地に固有な火山現象の頻出がさらにいっそうその変化に特有な異彩を添えたようである・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
出典:青空文庫