・・・たとえば城代の顔と二三の同志の顔のクローズアップ、それに第一のクライマックスに使われた「柱に突きささった刀」でもフラッシュバックさせるとか、なんとかもう一くふうあってもよさそうに思われた。 滅びた主家の家臣らが思い思いに離散して行く感傷・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・松尾宗房と云い、伊賀国上野町の城代藤堂家の家臣で、少年から青年時代のはじまりはその城代の嫡子の近侍をしていた。既にその時代、俳諧は大流行していて若殿自身蝉吟という俳号をもって、談林派の俳人季吟の弟子であった。宗房もその相手をし早くから俳諧に・・・ 宮本百合子 「芭蕉について」
・・・役向きの事はすべて同役の稲垣に相談して、城代に伺って処置するのであった。それであるから、桂屋太郎兵衛の公事について、前役の申し継ぎを受けてから、それを重要事件として気にかけていて、ようよう処刑の手続きが済んだのを重荷をおろしたように思ってい・・・ 森鴎外 「最後の一句」
出典:青空文庫