・・・ では、例えばソヴェトじゅうの工場と役所とが日曜日だというと一斉に休業して、用のある者はしまったガラス戸越しに机と電話、磨かれた機械は見るが、そこで呼びかけるべき人間の影も無いという状態は、果して能率増進的であろうか? 心理学の実験は、人間・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・あすこは能率増進のために極度に分業化され、たとえば鋲をこしらえる部では何年経とうがそれだけやらせられるから、さてクビになると機械工といってもかたわで修繕工にさえなれない。これは恐しいことであると従業員は訴えているのである。 私たちは、自・・・ 宮本百合子 「個性というもの」
・・・人間の苦労は老衰の疲労に伴なう苦労ではなく、まだ訓練されていないこれから増進する力量に伴なう苦労である。吾々が本書で試みたように全歴史を一個の過程として眺めるとき、すなわち生命の着々たる向上的闘争を見るとき、その時こそ吾々は、現在の希望や危・・・ 宮本百合子 「世代の価値」
・・・生産能率増進のためのウダールニクが各工場役所の内部に組織され、それに参加した各員が、てんでんの場所で反革命分子との激しい闘争の経験をもつようになったのはいつからだ? 矢張り一九二八・九年からだ。 ソヴェトの劇場で、程度の差こそあれ、こ・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・フォードの極度に合理化された能率増進の分業では、一つずつの作業に、人間として最大の能力を発揮する労働者が配置されている。そのかわり、万一その労働者がその職場を追われると、彼はもうどこでも働きようがない。彼は自動車製造という長い全面工程のたっ・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
・・・、講習をしたりすること、健康増進をはかりたい等説明しているのである。そしたら「十年二十年の間に見ちがえるような東北地方が出現するであろう」と思うというのが友松の意見であるが、果してそれが現実の問題としてどの位しっかりした具体性をもっているか・・・ 宮本百合子 「村からの娘」
・・・若しストライキが起るとすれば、若し大衆的行動が現場に起るとすれば、今日、それは勤労し生産する者が単に労働条件を改善するというばかりでなく、社会的必要を満たすためにより能率を増進し、より生産を増大させて、生産の真の民主化を計ろうとするためであ・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・食物は海と山との調味豊かな品々が時に従って華やかな色彩で食慾を増進させた。空気は晴れ渡った空と海と山との三色の緑の色素の中から湧き上った。物音とてはしんしんと耳の痛む静けさと、時には娯楽室からかすかに上るミヌエットと、患者の咳と、花壇の中で・・・ 横光利一 「花園の思想」
出典:青空文庫