・・・今日作品を書いている佐多稲子、平林たい子、松田解子、壺井栄など。これらの婦人作家は、それまでの婦人作家とちがって、貧困も、勤労の味も、女としての波瀾も経験した人々であった。そういう人達によって、本当に社会矛盾を認識し、人間として伸びようとす・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
一 一九四三年だったかそれともその翌年だったか、ある夏のことであった。ある晩わたしは、中野鷺宮の壺井栄さんの家の縁側ですずんでいた。そのころ、わたしにとって栄さんの家は生活の上になくてはならない休・・・ 宮本百合子 「その人の四年間」
小説をかくひととしての壺井栄さんが人々の前にあらわれたのは一九三八年の末のことであった。この集にはおさめられていない「大根の葉」という作品をよんだ人々は、これまでの婦人作家の誰ともちがった気質と話しぶりとをもっている一人の・・・ 宮本百合子 「壺井栄作品集『暦』解説」
・・・蔵原惟人の評論も、佐多、松田、壺井、宮本の小説も、新しく書き出した人々の作品も、すべての労作がその独特さと共にもっている民主的文学としての意味において組織的にとりあげられた時、私たち自身の心をつかまえてゆすぶるような古きものへの闘いの意気が・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・ 窪川稲子さん、壺井栄さんなどとの互の心持の関係は、友情もひととおりのものでなく、そういうところまで行っているのだと思う。そして、めいめいの良人に対する友情も、謂わば互の心にある妻としての情愛を互に理解した上でのようなところがあって・・・ 宮本百合子 「なつかしい仲間」
・・・婦人の政治的、社会的啓蒙、民主化活動も同時にとりあげられて、CIEの個人的顧問であった婦人たちを中心として佐多稲子、壺井栄、山本安英その他の婦人芸術家をも包括する婦人民主クラブが組織された。その下準備のために多くの時間がさかれた。三月、・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・によって、働いて生きる人々の清潔で勤勉な人生の語りてとしてあらわれた壺井栄が「暦」の続篇としての性格をもっている「渋谷道玄坂」をかき、その系列として「妻の座」を生んだことには、軽く通りすぎてしまうことのできない意味がみとめられる。「妻の・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・すでに三月二十七日頃から敵は文化連盟への攻撃を開始し、書記長小川信一をはじめ窪川・壺井・村山・中野など大切な同志をひっぱって行っている。敵が大規模にわれわれ日本プロレタリア文化連盟への打撃を計画していることは明らかなのでありました。 さ・・・ 宮本百合子 「ますます確りやりましょう」
・・・栄さんと云えば壺井の栄さんしかない。その栄さんが又互の生活のなかでは、そういう場面に登場するので愈々現実の条件がそろい、じゃ、いつかから見えないって云っていた縞の、ね、あれかもしれない、と私は電話口でその時分の人出入りも激しかった暮しの姿を・・・ 宮本百合子 「まちがい」
・・・ よみ難かった母の原稿の浄書から印刷に関する煩瑣な事務万端について援助を惜しまれなかった私の親友壺井栄夫人に感謝する次第である。〔一九三五年七月〕 宮本百合子 「葭の影にそえて」
出典:青空文庫