・・・ほんとうに協力すべきものとして、男と女が互に理解し、その理解のうえに立って愛し合い、そして生涯を生きてゆくならば、協力の場面の多さと、協力の意味の多様さとその変化の多さにびっくりしないではいられないと思う。協力はいつでも前掛けをかけていると・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・人民層の多様さに応じた多様な歴史的善意が、それぞれの必然によって湧きたち、そのものとしてうけ入れられ、結合され高められつつあります。個人の善意がそのような形で結集しよりつよい形で生かされようとしています。 この新しい段階の多様な面白さ、・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・人間らしい生活の多様さや発展、生きている甲斐が感じられるような人生をもとめて結婚した一人の若い女が、あいてと自分との結婚生活の現実に見出したものは、無目的で、エゴイスティックな理想のない日々の平安への希望だけであった。流れ動き生成する男女の・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第六巻)」
・・・ プロレタリア文学の形式の多様化の一つとして、われわれに求められているのは、愉快な階級的哄笑を爆発させるプロレタリア諷刺劇、又は諷刺小説、詩である。 例えば、左翼劇場で上演した「銅像」を、みんなどんなによろこんで観、あとまでその印象・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・経済矛盾の大きい社会ほど、売淫は多様広汎になって来る。ベルリンに、日本に、売笑のあらゆる形態が生れ出ていることは、ファシズムの残忍非道な生活破壊の干潟の光景である。独善的に民族の優越性や民族文化を誇張したファシズム治下の国々が、ほかならぬそ・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・『甲陽軍鑑』がこれらの部分において語っていることは、非常に多種多様であるが、しかしそれを貫いて一つの道徳的理想が動いているように思われる。軍法の巻においてさえも、その主要な関心は、戦術や戦略の末ではなくしてその「もと」を探ることにあった・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・これらの多様なる本能が統一せられた所に個性がある。従って個性もまた明確に認識せられ得るはずのものではない。 個性は、たとえていえば人相のようなものである。一、二の特徴を捕えることは出来るが、微妙な線や表情になると到底詳しく説明することは・・・ 和辻哲郎 「自己の肯定と否定と」
・・・近代文化が多種多様な内容を持っていただけに、その計算の結果も定めて複雑なものだろう。 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
・・・いかに人形使いの手先が器用であるからといって、人形に無限に多様な動きを与えることはできない。手先の働きには限度がある。そこでこの限度内において人形を動かすためには、不必要な動作、意味の少ない動作は切り捨てるほかはない。そうすれば人の動作にと・・・ 和辻哲郎 「文楽座の人形芝居」
・・・の意義の多様を弁別しおくこともまた必要であろう。 岸田君の論文集が自分に与えた感銘はこれだけにとどまらない。が、自分はただこの書を読者諸君に推薦し得たことに満足して筆を擱く。 和辻哲郎 「『劉生画集及芸術観』について」
出典:青空文庫