・・・実際運動に携わっている婦人達も、これで失望したり、騒ぎ立てたりするよりは、もう少し根気よく、実力を蓄えつつ賢い忍耐で、人生の大局を見まもる訓練を得ていますでしょう。 私一箇人としては、今迄の通り同性のそう云う運動に、好意と感謝を含めた沈・・・ 宮本百合子 「参政取のけは当然」
・・・いろいろとんちんかんなことはあったにしろ、大局において日本の人民の基本的人権の確立についての土台石はこの期間におかれた。言論・出版・集会の自由、良心と身体の自由。治安維持法が廃止され、憲兵・特高制度が廃止されたということは、直接治安維持法の・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
・・・ジイドは、自分がコンゴーを観た観かた、どこでも、何にも目を奪われず、常に絶対に誠実であろうとする自己の主観的な常套にのみ固執し、それに意識を奪われて大局を見誤っている。彼の理解に従っての精神の独立不羈を護ろうとする、その態度を示す自己目的の・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・作家と作品への個々のこのみはいろいろだろうが、文化反動とたたかう現実の大局から文学の問題も客観的に語られなければならないときである。民主主義文学の共同の成果をしいてゆがめるようなやりかたは敵を満足させるだけである。〔一九四九年三月〕・・・ 宮本百合子 「事実にたって」
・・・川端康成が、女子供の文章の真実を、その素朴な偽なさの故に評価しようとしたことも、大局からみればやはり文学の夥しい自己喪失を意味するものであったと思う。 このような文学に於ける社会的見地の抹殺と客観的な評価の消滅が充ちていたとき、最低限の・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・然し、その話のみならず、全体として結婚しようか、しまいか、大局に於ての決心がつかない苦しみの方が大きいらしかった。それに、その問題で愈々家を出る決心はしたが、職業がない。千鶴子は、どこかぎこちなく修飾した言葉つきでそれ等を訴えながら、細面の・・・ 宮本百合子 「沈丁花」
・・・虫のすかないのは同感だが、虫がすかないからと云って私たちは、素朴な、口実を与える方法で自分たちの大局的自主性を失おうとは思うまい。そこが談判のしどころであろう。その場の必要な行政的権限を確保しつつ、前わたしとして渡せば、営団のちょろまかす範・・・ 宮本百合子 「人民戦線への一歩」
・・・昨今従来のタイプの作家が主観的であるという特質は、時代的底潮によって実に巧妙に、大局から見れば文学を窒息させる客観的効果の方向に利用されつつある。現代は大小の文学的才能が、自身の才能の自意識であらぬ方にそれぬためには、よそめに分らぬ程野暮な・・・ 宮本百合子 「数言の補足」
・・・ 大局からこう考えてくると、現代日本の悲劇である殺人や強盗において、人民たるわれわれは、加害者も、日本の軍閥の被害者であるということがわかり、いってみれば被害者同士だといえる。しかし何んでもない動機で、チョット物がとりたくて人の首をしめ・・・ 宮本百合子 「戦争でこわされた人間性」
・・・こんにちの歴史の局面について世界史的に、大局的に判断することが可能なような知的な自由というものを知識人は与えられていない。誰でも読む新聞、誰でも聴くラジオと軍歌、演説が知識人の知識の糧であり得るにすぎない。今日ほど、知識人が客観的に大衆なみ・・・ 宮本百合子 「全体主義への吟味」
出典:青空文庫