・・・文学会の評論家、作家をよんで、話すことだけは話させておいて、それっきり、あとを発展的に生かさないで、ときには嘲弄的な批評を加えることがあるという風なことが実在するとすれば、それは、民主的文学をそだてる大局から考えなおされなければならないこと・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・故に、或る場合には、大局に於て結果のよい為に、小さい不便を忍ぶことが双方にあるでしょう。それは、二人の負う義務並に責任で、決して相すみません、と云わなければならないことではありません。互に為すべきことを明に弁え、正しく賢く着々と生活を運転さ・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・徒らに言論を抑圧するということが自然と社会のすべての事実に対して、どれほど目さきのききめしかなく、しかも大局からみて聰明な処置でないかということについての真実がここに示されている。 討議という意見の発表と研究の方法を日本の人民は学ぶべき・・・ 宮本百合子 「地球はまわる」
・・・火野葦平のそういう働きかた、動かされかたは、この二三年来の大局から見て彼一人に止らなかった。いろいろの形で彼を動かし又彼が動いたような動きの本質が、日本文学に入って来ていて、それはやはり現代文学の流れに或る色調を加えたものである。将来の文学・・・ 宮本百合子 「地の塩文学の塩」
・・・解決の端緒を社会的な契機の中に見出していないことから、彼女はこの自身の矛盾を大局からつかみ得ず、自分の行動をも客観的に批判し得ないのである。「女一人大地を行く」に書かれているまでのアグネス・スメドレーは、不屈な闘志と生来の潔白な人間的欲・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・べったりと、大局的抑揚少く、日から夜へ夜から日へと進んでゆく。ゴーリキイは自分勝手に現実を拵えない作家であると同時に、時には目の先の現実に押されたと思われます。「四十年」が長篇として失敗していることには、加うるに他の原因があったでしょう・・・ 宮本百合子 「長篇作家としてのマクシム・ゴーリキイ」
・・・そのために大局からみれば梅原龍三郎をかれの世界へ停滞させて、とりまきにおだてさせておく事情になるし、より新しい美術の生れて来る生活感情へのもだえを消し批判と新しい創造力をあいまいにする。 例えばピカソの画についてどれだけの人がピカソの世・・・ 宮本百合子 「ディフォーメイションへの疑問」
・・・「彼のごとき作家的才能のあるものが実践の為に精力をとられ、芸術的活動をそれほど鈍らせるのは大局から見て損失だ」という風に論じていたようであるが、私はそうは思わない。杉山氏によれば、同志小林は作家として「当面やるだけのことはやってのけてしまっ・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価によせて」
・・・第二次大戦後の世界文学は、その進歩的な発展的な面では、大局的にそして決定的に民主と平和の方向をとっています。第二次大戦によって利潤をうけた人々はその利潤を失うことを欲していないために、戦争挑発も行われているのが現実です。しかしヨーロッパや東・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・けれども、作家と時代とのいきさつを、本当に大局からみて、歴史の足どりがその爪先を向けている磁力の方向と、その関連に於て作家一人一人がそれなしに文学は創造もされず存在もしない個々の独自、必然な道をどう見出して行くかということについて、何となし・・・ 宮本百合子 「遠い願い」
出典:青空文庫