・・・日本が地理的に大陸からぐるりを海できりはなされているという偶然の条件を、もうこれ以上人民の歴史の不幸の原因としてはならないと思う。わたしたちの世間知らずのために、種々さまざまのあることないことを外国についてきかされっぱなしで半信半疑でいるこ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第八巻)」
・・・ 社会と思想とが大きい波をかぶりつつ経て来た日本のこの数年間の生活の思い出を、あたり前の文学上のもの云いで語らず、こういう鬼や地獄をひき出して描き出すこの作者のポーズ、スタイルというようなものと、今日大陸文学懇談会とかいうところの一つの椅子・・・ 宮本百合子 「観念性と抒情性」
・・・フランスの古い国のいろいろな宗教的の重荷とか税の問題とか貿易の問題、生産の問題ということで、自分達がそこでは窮屈で息詰ってしまってたまらないような人達が、勇気をふるって船に乗って、海を渡ってアメリカの大陸に参りまして、そこで初めて自分達が耕・・・ 宮本百合子 「幸福の建設」
・・・ とくに、アジア大陸に向って、ひとつらなりの弓のようにはられている島国、日本の人民の運命は、世界平和の要求がたかまるにつれ、アジア大陸の民主勢力が拡大されるにつれ、一層力づよく平和のためにたたかわなければならない立場になりました。 ・・・ 宮本百合子 「国際婦人デーへのメッセージ」
・・・農民文学懇話会、大陸文学懇話会、生産文学、都会文学懇話会というものまでも、故小橋市長によってもくろまれた。芥川、池谷、千葉賞のように、故人となった文学者の記念のための文学賞ばかりか、農民文学には有馬賞というのがあり、中河与一氏の尽力によって・・・ 宮本百合子 「今日の文学と文学賞」
・・・社会事情の変化と共に大陸を背景として行われている歴史的な行動における人間の記録は、人間の精神と肉体との白熱的な報告として行き詰った文学の世界に新生を与えるであろうという希望もかけられたのであった。 ところが、この希望も単純に満たされるこ・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・とうたわれた日本は、東も西も大陸からきりはなれていて、弦をはったような狭い日本はファシズムと治安維持法ですき間もなくふさがれていた。大新聞の国際報道さえ制限され、外国の本の輸入は禁じられ、国際的な統計はもとより国内事情の実際を知る統計は禁止・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・ 動坂の上にたって今日東の方を眺めると、坦々たる田端への大通りの彼方にいかにも近代都市らしい大陸橋が見え、右手には道灌山の茂みの前に大成中学校の建物が見える。それにつづいて上野の森がある。 焼けなかった頃の動坂は、こまかい店のびっし・・・ 宮本百合子 「田端の汽車そのほか」
・・・ このことは何となし関心にのこることがらであった。 大陸文学ということが云われ、内地の作家が大陸へ行ってものをかく。大陸での見聞を書く。だがそれで大陸の文学であろうか。アメリカの文学、ソヴェトの文学、どれも文体そのものの血肉の中に大・・・ 宮本百合子 「文学と地方性」
・・・今度読んで特別心に刻まれたのは、それらのドライサアの作家としての特質が、アメリカという大陸の社会生活の血液循環に何とはっきり養われているかという点についてのおどろきである。 バルザックの作品の深さ大さにふれるとき、私たちは作家バルザック・・・ 宮本百合子 「文学の大陸的性格について」
出典:青空文庫