・・・○こわれた電燈カサが床の間の隅っこにいつからか置いてある。○大雨 急行がとまっている。「久栄で 白米一俵とりにきよった たき出しでもするじゃあろうて」 汽車/Kisha いんでてか? 麦の穂先だけのぞいている、 ・・・ 宮本百合子 「Sketches for details Shima」
○パオリのこと ○父と娘との散策 ○武藤のこと ○貴婦人御あいての若い女 ○夢 ○隣の職工の会話 ○夜の大雨の心持。 ○小野、山岡、島野、(態度 ○十月一日 ○日々草 ×柳やの女中の・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・ ころばない要心にどんな大雨でもそれより外履いた事のない私の足駄――それは低い日和下駄に爪皮のかかったものである――では、泥にもぐったり、はねがじきに上ったりして大層な難儀をしなければならなかった。 小一時間も掛って漸う赤門の傍まで・・・ 宮本百合子 「追憶」
・・・その木の間がくれに見える白い梨花、春の嵐が来て空は今にも大雨を降らしそうな鉛色で鈍く暗く、光る。その下にねっとり白く咲く梨の花の調子は、不安なポプラの若葉の戦ぎと伴って、一つの音楽だ。熱情的な五月の音楽だ――何の花だろう。何の花だろう。朝起・・・ 宮本百合子 「夏遠き山」
未練も容謝もない様に、天から真直な大雨が降って居る。 静かな、煙る様な春雨も好いには違いないけれ共、斯うした男性的な雨も又好いものだ。 木端ぶきの書斎の屋根では、頭がへこむほどひどい音をたてて居るし、雨だれも滝の様・・・ 宮本百合子 「無題(三)」
・・・〔欄外に〕 さあと暗くなって来て沛然と大雨になって来た。トタン屋根に白シブキを上げ。見ると豪雨に煙ってむこうの山はちっとも見えなくなった。海が近いところらしい大胆な雨に頭のしんまで洗われるようなよろこびを感じた。よろこびは、○の・・・ 宮本百合子 「無題(十二)」
出典:青空文庫