・・・中学は東京の大学に似たれど、警察署は耶蘇天主堂に似たり。ともかくも青森よりは遥によろしく、戸数も多かるべし。肴町十三日町賑い盛なり、八幡の祭礼とかにて殊更なれば、見物したけれど足の痛さに是非もなし。この日岩手富士を見る、また北上川の源に沼宮・・・ 幸田露伴 「突貫紀行」
・・・けれども、今日引こもっては、もう大浦、浦上の天主堂も見ずに仕舞わねばならない。其は残念だ。Y、天を睨み「これだから貧棒旅行はいやさ」と歎じるが、やむを得ず。自動車をよんで、大浦天主堂に行く。坂路の登り口に門番があり、爺さんが居る。こ・・・ 宮本百合子 「長崎の一瞥」
・・・福済寺、大浦、浦上天主堂への紹介を得、宿に帰った。 独りで待たされていたY、退屈しぬき、私の顔を見るといきなり云うことには、「――どうだった? プティ・ペダント」 二時頃から小糠雨が降り出す。長崎に切支丹伝道が始って間もなく・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
出典:青空文庫