・・・ 稲田の間を駛りながら、私はつい先頃新聞に出た「百万人の失業者」という記事を思いおこした。政府は重要産業の補償をうち切って、百万人の失業者を出すそうだが、その百万人の人々とその家族、その主婦たちにとって、この威風にみちた秋田の稲田のこと・・・ 宮本百合子 「青田は果なし」
・・・預金封鎖の強化と失業におびやかされて、芝居ずきの人も手当りばったりに金を出さなくなったわけです。本やでも同じことが云われはじめました。本当にいい本必要な本しか売れにくくなったと。 ここに、生活の条件とぴったりあった人の考えかた、判断とい・・・ 宮本百合子 「朝の話」
・・・婦人の安い労働賃金、青少年の安い労働賃金、それはいつも成年男子の賃金の安定を脅かして来た。失業の予備軍となっている。しかしそういう点で共通の幸福を守ること、その協力の意味を理解しない男の人たちは、組合が要求するから仕方がないようなものの、女・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・この事情は、国内的には人民の生活に重すぎる税となって重荷を加え、婦人子供の辛苦はひとしお深まってきていることを意味します。失業はふえ、生活費は高くなり、生活の安定は社会の全面でくずれかかってきています。 日本の状態は、日本のわたしたちの・・・ 宮本百合子 「新しいアジアのために」
・・・中産階級の急速な貧困化、それにともなって起っている深刻な失業、インテリゲンツィアの経済的、精神的苦悩は、実際にあたって、恋愛や結婚問題解決の根蔕をその時代的な黒い爪でつかんでいるのである。この事実を痛切に自覚しない若者は、恐らく一人もないで・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・吉田首相がどんなに綺麗な白足袋をはいているかということではなくて、続々と失業させられている労働者の食べられるもの、着ていられるものは何か、田圃で働いている人々、苦しい中小商工業の人々の生活で、赤坊の着ているものはどういうものかということに、・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・ 婦人に向けられる失業や、女子学生のアルバイトの問題。職業と家庭生活との矛盾の問題。最悪な人民経済の事情から女性は家庭からどしどしはたき出されているのに、生活を求めて女性がたたかってゆく社会では、昔ながらの封建性が克服されていないばかり・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十五巻)」
・・・そのころ、イギリスの失業者数は三百万人から四百万人もあった。高度に発達した資本主義国は、そのころ急速に資本の独占化にすすんで、いわゆる合理化の結果、どこでも慢性的な大衆失業にくるしんでいた。イギリスでマクドナルドの労働党が多数をしめて労働党・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第八巻)」
・・・あるいは失業者の息子が二人、店に掻払いにきたのに、亀のチャーリーがつかまえて説得して「本」をやると「二人はやがていいピオニイルに成長して、いつも二人で組になって活動した」と。 あとからあとからそのようにしてつくられるピオニイルらは、どこ・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・特に、生活資金の二百円削減は、日常生活に甚大に響き、物価高、米の配給遅延の悪条件、失業の増大等、どんな婦人の心にも、このままではやってゆけない切迫感を湧きたたせている。婦人立候補者の大部分は「政治と台所の直結」といい「女の問題は女で」といい・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
出典:青空文庫