・・・が、何しろ御維新以来、女気のない寺ですから、育てると云ったにした所が、容易な事じゃありません。守りをするのから牛乳の世話まで、和尚自身が看経の暇には、面倒を見ると云う始末なのです。何でも一度なぞは勇之助が、風か何か引いていた時、折悪く河岸の・・・ 芥川竜之介 「捨児」
・・・書記等は多分これはどこかから逃げて来た女気違だろうと思った。 女房は是非縛って貰いたいと云って、相手を殺したという場所を精しく話した。 それから人を遣って調べさせて見ると相手の女学生はおおよそ一時間程前に、頸の銃創から出血して死んだ・・・ 著:オイレンベルクヘルベルト 訳:森鴎外 「女の決闘」
・・・「イヤお恥しいことだが僕は御存知の女気のない通り詩人気は全くなかった、『権利義務』で一貫して了った、どうだろう僕は余程俗骨が発達してるとみえる!」と綿貫は頭を撫てみた。「イヤ僕こそ甚だお恥しい話だがこれで矢張り作たものだ、そして何か・・・ 国木田独歩 「牛肉と馬鈴薯」
・・・内の人の身分が好くなり、交際が上って来るにつけ、わたしが足らぬ、つり合い足らぬと他の人達に思われ云われはせぬかという女気の案じがなくも無いので、自分の事かしらんとまたちょっと疑ったが、どうもそうでも無いらしい。 定まって晩酌を取るという・・・ 幸田露伴 「鵞鳥」
・・・書記等は多分これはどこかから逃げて来た女気違だろうと思った。 女房は是非縛って貰いたいと云って、相手を殺したと云う場所を精しく話した。 それから人を遣って調べさせて見ると、相手の女学生はおおよそ一時間前に、頸の銃創から出血して死んだ・・・ 太宰治 「女の決闘」
・・・「夜這に来た、夜這に来たッておれのうちに女気は一人も半分もないじゃないか」。「ナニあるでがすヨ」。「変な事いうネ、おれの女房は三年前に死んだし、娘は持たず、お三どんだッて置かないのはお前も知ってる通りだろうじゃないか」。「なんといわしっても・・・ 正岡子規 「権助の恋」
・・・一人で、さっぱりした座敷の真中に小机を持ち出し書類を調べているひっそりした姿も見た。女気がない。 時々、若い女の人が前栽に見えたり、「たくさん買っていらっしたのね、おじいさん、五十銭!」などという声が聞えた。土曜から日曜にかけて・・・ 宮本百合子 「蓮花図」
出典:青空文庫