・・・この頃になって彩色の妙味を悟ったので、彩色絵を画いて見たい、と戯れにいったら、不折君が早速絵具を持って来てくれたのは去年の夏であったろう。けれどもそれも棚にあげたままで忘れて居た。秋になって病気もやや薄らぐ、今日は心持が善いという日、ふと机・・・ 正岡子規 「画」
・・・ 幸四郎も熱を持ち、真実に演じようとはしていたらしいけれど、妙味を見せる場所もなかったように見える。 嘉久子の早苗は、序幕の舞台が廻ってからが際立ってよかった。 父鷺坂の居城が、此の武田勢に囲まれて既に危いと云う注進に、はっと顔・・・ 宮本百合子 「印象」
・・・そして、現代における大きい典型の再発見の妙味は、それが、ルネッサンスの世界、バルザックの世界にあるように、怪物同士、典型間の力の不均衡と矛盾を通してだけ見られているのではないという点である。頭をあげて、人民の理性が立ちあがったその眼が、その・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
出典:青空文庫