・・・もともと金之助さんを袖子の家へ、初めて抱いて来て見せたのは下女のお初で、お初の子煩悩ときたら、袖子に劣らなかった。「ちゃあちゃん。」 それが茶の間へ袖子を探しに行く時の子供の声だ。「ちゃあちゃん。」 それがまた台所で働いてい・・・ 島崎藤村 「伸び支度」
・・・親思いで、子煩悩で、友をなつかしがった。 若い時分キリスト教会に出入りして道を求めたが得る所がなかったと云っていた。禅に志して坐禅をやったことがあったが、そこにも求めるものは得られなかった。晩年には真宗の教義にかなり心を引かれていたそう・・・ 寺田寅彦 「工学博士末広恭二君」
・・・「パパとママとどっちがいいと聞かれたので、どっちもいいと答えけるかな」子煩悩な両親と一人息子の生活は、作者の根気よい筆で、子供の探求心の問題、性教育の問題にまで殆ど育児教科書のように触れて行っている。 今や允男は、青年となった。允男を高・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
出典:青空文庫