・・・ところが芸術にたずさわっているものとしての僕は、ブルジョアの生活に孕まれ、そこに学び、そこに行ない、そこに考えるような境遇にあって今日まで過ごしてきたので不幸にもプロレタリアの生活思想に同化することにほとんど絶望的な困難を感ずる。生活や思想・・・ 有島武郎 「片信」
・・・また、どういうときに、自分は跳ねなければならぬかということを学びました。 小さな白鳥は、はじめて、これによって、敏捷な、本性を目ざめさせられたのです。こののち、どんなときに、油断をしてはならないかということを知りました。 春もすぎて・・・ 小川未明 「魚と白鳥」
・・・また、甲の頭と、乙の頭とが、生れながらにして、全く、異っているというよりは、或者は、まだ、其の感情や、感覚を学び知らないのだといった方が当然であろうと思われる。 何故となれば、私は、すべての人が私と同じような人間であると思うからだ。・・・ 小川未明 「忘れられたる感情」
・・・古座谷はかつて最高学府に学び、上海にも遊び、筆硯を以って生活をしたこともある人物で、当時は土佐堀の某所でささやかな印刷業を営んでいた……。 まず無難な書き方だ。あとでどう辛辣に変ろうとも、また、そうでなくては「あばく」ことにもならないわ・・・ 織田作之助 「勧善懲悪」
・・・すなわちわれは思想なき児童の時と異なり、今は自然を観ることを学びたり。今や人情の幽音悲調に耳を傾けたり。今や落日、大洋、清風、蒼天、人心を一貫して流動する所のものを感得したり。 かるが故にわれは今なお牧場、森林、山岳を愛す、緑地の上、窮・・・ 国木田独歩 「小春」
・・・そして姉も弟も初めのうちは小学校に出していたのが、二人とも何一つ学び得ず、いくら教師が骨を折ってもむだで、到底ほかの生徒といっしょに教えることはできず、いたずらに他の腕白生徒の嘲弄の道具になるばかりですから、かえって気の毒に思って退学をさし・・・ 国木田独歩 「春の鳥」
・・・ かれは文学と画とを併せ学び、これをもって世に立ち、これをもってかれ一生の事業となさんものと志しぬ、家は富み、年は若し。この望みはかれが不屈の性と天稟の才とをもってしては達し難きものにあらず。かれはこれを自信せり。一年の独居はいよいよこ・・・ 国木田独歩 「わかれ」
一 学窓への愛と恋愛 学生はひとつの志を立てて、学びの道にいそしんでいるものである。まず青雲を望み見るこころと、学窓への愛がその衷になければならぬ。近時ジャーナリストの喧声はややもすれば学園を軽んじるかに見・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・書物にあまりに依頼し、書物が何ものでも与えてくれ、書物からすべてを学び得ると考えるような没我主義があってはならない。実際研究することは読書することであると考えてるかのように見える思想家や、学者や学生は今日少なくないのである。明治以来今日にい・・・ 倉田百三 「学生と読書」
・・・彼等の思想や、立場には勿論同感しないが、彼等のペンをとる態度は、僕は、どこまでも、手本として学びたいと心がけている。 愛読した本と、作家は、まだほかに多々あるが紙数の都合でこれだけとする。・・・ 黒島伝治 「愛読した本と作家から」
出典:青空文庫