・・・これが、いわば安全弁のような役目をして気持ちよく折れてくれるので、その身代わりのおかげで肋骨その他のもっとだいじなものが救われるという話である。 地震の時にこわれないためにいわゆる耐震家屋というものが学者の研究の結果として設計されている・・・ 寺田寅彦 「鎖骨」
・・・言わば高圧釜の安全弁のように適当な瞬間に涙腺の分泌物を噴出して何かの危険を防止するのではないか、そうでないとどうも涙の科学的意義がのみ込めない。 ある通俗な書物によると、甲状腺の活動が旺盛な時期には性的刺激に対する感度が高まると同時にあ・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・自分には猫の事をかくのがこの上もない慰藉であり安全弁であり心の糧であるような気がする。 Miserable misanthrope この言葉が時々自分を脅かす。人間を愛したいと思う希望だけは充分にもっていながら、あさはかな「私」にさえぎ・・・ 寺田寅彦 「備忘録」
出典:青空文庫