・・・ 市長は安楽椅子にもたれて、彼を待っていた。この市長というは土地の名家で身の丈高く辞令に富んだ威厳のある人物であった。『アウシュコルン、』かれは言った、『今朝、ブーズヴィルの途上でイモーヴィルのウールフレークの遺した手帳をお前が拾っ・・・ 著:モーパッサン ギ・ド 訳:国木田独歩 「糸くず」
・・・ * * * 電灯の明るく照っている、ホテルの広間に這入ったとき、己は粗い格子の縞羅紗のジャケツとずぼんとを着た男の、長い脚を交叉させて、安楽椅子に仰向けに寝たように腰を掛けて新・・・ 森鴎外 「沈黙の塔」
出典:青空文庫