・・・文化における資本主義の害悪を具体的に感じたすべてのものは、日本の人民の自主的な文化を守り、それを発展させることが、経済と政治の面における人権確立にともなう実際的な一つの要素であることを自覚した。産別、総同盟をふくむ労働組合と民主的文化団体の・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・しかし、このことは、作者の生活を着実に大人の女として発展させてゆくためには深刻な害悪の多い刺戟となった。一人の少女は、自分をまともに女として、作家としてひっぱってゆくためには、一篇の小説を発表したことによって自分の内と外とにひきおこされたあ・・・ 宮本百合子 「作者の言葉(『貧しき人々の群』)」
・・・ 石原氏は、科学が軍事的功利主義で余り掣肘されることの害悪を主張しておられる。その点は誰しも会得しやすいのである。しかし、石原氏がナチの科学政策とソ連の科学政策とを質的に同一なものとして否定しておられるのは、何だか腑に落ちない。常識人の・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・実に砂糖の害悪を強調した。一方、勤労動員されたすべての少年少女が、何よりほしがったのは甘いものだった。肉体をこきつかわれた疲れを、せめて甘いものでいやしたくて、「上品」だった筈の女学生たちは寄宿舎で、ぼた餅やあんころの話に羨望した。甘いもの・・・ 宮本百合子 「砂糖・健忘症」
・・・ 序言で、ジイドはギリシアの神話までを引用して、姑息な愛の恐るべき害悪を語っている。これまでソヴェトを旅行したものが、多くの場合それぞれの既成の見解に動かされて、ソヴェトの真相を憎悪の念をもっていうか、愛情をもって虚偽を伝えるかする傾向・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・現代の日本の文化の中心題目は、民族の民主的・人民的自立、再燃するファシズムとの闘い、ファシズム文化の害悪との闘いです。文化も人民解放の歴史の刻々の段階に応じて人間的表現の核を前進させつつあります。 日本のわたしたちにとって、もっとも警戒・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
・・・そして、自己批判によって一層高められたレーニン的党派性の理解に立って、この決議の実践、大衆化のために努力し、同時に、わが陣営内の最も害悪ある敵、日和見主義と、いよいよ正しく、譲歩するところなく闘争することを、自身の課題とするものである。・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・ それにつけても、戦争犯罪人というものの行為が及ぼした害悪の大さと深さとにおどろかれる。それらの人々は、経済的に、政治的に祖国を破綻させたとともに、民族の道義をも難破させた。戦争を強行するためには、すべての人民が、理不尽な強権に屈従しな・・・ 宮本百合子 「その源」
・・・ディフォーメイションがデッサンの不確さを蔽うというイージーな画業への害悪を取上げてみても真面目な画家ならそこに疑問を発見するだろうと思う。〔一九四七年六月〕 宮本百合子 「ディフォーメイションへの疑問」
・・・これらは日本の中において旧勢力と抱き合っているばかりでなく、世界のファシズム的傾向に内応する要素で民主化にとって害悪のあるものです。 日本がこういう状態だということは、世界のどの国にもまして民主化と民族の自立のための努力が求められている・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
出典:青空文庫