・・・女の職業を一時的なものとみる社会の習慣の何よりの害悪は、婦人の力がこの社会の必要にとって今は全く欠くべからざるものとなって来ている現実だのに、それに対して周囲の社会も女自身もその重大な意味にしっかりと目を定めて学ぼうとしないで、客観的にも主・・・ 宮本百合子 「働く婦人の新しい年」
・・・労働者のクラブには衛生陳列室があって、性病とその遺伝の害悪を模型や図解で示し、肺病、癲癇、アルコール中毒等についても若者たちの具体的、日常的要心を喚起している。 竹内茂代女史は、日本女子の体格分類統計をもって医学博士になられた。彼女の博・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・今日でも尚そのことが一般に嗤うべきこと、作家にとっても読者にとっても害悪しかないことと理解され切っていないところがあり、例えば三月号の『文芸』には村山知義氏が「父たち母たち」という小説を書いている。かつて「白夜」を書いたこの作者は「思想関係・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・このことは、日本民主化のために重大な害悪となっている。 一九四九年の三月、保守陣営が絶対多数をしめてからの日本は、基本的人権に関するあらゆる面で人民の側からポツダム宣言の忠実な履行を、あらためて要求しなければならない状態になった。 ・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・のの主人公をして事そこに到らざるを得ないようにした錯綜、また〔三字伏字〕配置された紛糾混迷などを描き出して、せめては悲劇的なものにまで作品を緊張させ得たら、人は何かの形で今日の現実に暴威をふるう権力の害悪について真面目な沈思に誘われたであろ・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
・・・商業ジャーナリズムの害悪はもちろんである。しかし、もっと深いところでこんにち認められる危険は、資本主義社会のいわゆる文化、娯楽が、きわめて知覚的な刺戟の連続として歌謡・バレー、あてものなどで組立てられ、プログラムづけられているということであ・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
・・・ 選挙運動がはじまって、乱立した各党が一票を我党へ、の活動を開始しはじめるや否や、この憲法草案が、どれほど日本の民主化のために害悪を及ぼすものであるかが誰の目にも明らかになって来ている。 今日、共産党以外の政党は、悉く、天皇制護持と・・・ 宮本百合子 「矛盾とその害毒」
・・・ 民法における婦人の立場というものは、はっきりと文部省の教育方針を照り合せ、しかも最もその消極的な害悪の多い面を照返している。例えば第十四条から第十九条に至る妻の無能力ということに関する条項、第八百一条から第八百四条に至る財産に対する妻・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・ただ、性格のしっかりした青年は、反抗心によってこの教育の害悪から救われているのです。 私は右の二つの態度のいずれをも肯定し、いずれをも否定しました。ではどうしろというのか。私はこのことについて一つのモットオを持っています。それは「すべて・・・ 和辻哲郎 「すべての芽を培え」
出典:青空文庫