・・・ーオ市では競馬場を植物園に拵え直すというので、その景色のいいまわりにアカシヤを植え込んだ広い地面が、切符売場や信号所の建物のついたまま、わたくしどもの役所の方へまわって来たものですから、わたくしはすぐ宿直という名前で月賦で買った小さな蓄音器・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・出征兵士は欠勤とし軍隊の日給をさし引いた賃銀を支給すること、各駅にオゾン発生器をおくこと、宿直手当、便所設置その他を獲得し、婦人従業員の有給生理休暇要求は拒絶されて女子の賜暇を男子と同じによこせ、事務服の夏二枚冬一枚の支給、その他を貫徹した・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・宍戸、宿直の日、小使部屋に居た そこへ女のひとが来て、喋って居るところへ、ひょっくり竹内入って来て、翌日やめさせるとか何とか云う、やはり臆病からなり。竹中、元、実業界に居た男、大正九年の暴落でつぶれ、竹内のところでごろつき、会に・・・ 宮本百合子 「一九二七年春より」
・・・ そこへけさになって、宿直の与力が出て、命乞いの願いに出たものがあると言ったので、佐佐はまずせっかく運ばせた事に邪魔がはいったように感じた。「参ったのはどんなものか。」佐佐の声はふきげんであった。「太郎兵衛の娘両人と伜とがまいり・・・ 森鴎外 「最後の一句」
出典:青空文庫