・・・揃った事は、婦人科、小児科、歯科もある。申しおくれました、作家、劇作家も勿論ある。そこで、この面々が、年齢の老若にかかわらず、東京ばかりではない。のみならず、ことさらに、江戸がるのを毛嫌いして「そうです。」「のむです。」を行る名士が少くない・・・ 泉鏡花 「燈明之巻」
・・・おそらく小児科も産婆も用のないとこなんだろう。こんなかの女は誰も子を生まない。だから天国は遙に遙に遠い青空だ」柳原女史は、「やあ来た来たむこうから」と不幸な女たちの容貌を見て「感情というものをすっかりすりつぶしちゃった」詰らぬ「兎に角目が並・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・托児所はキット一人の小児科医と数人の姆母さんと炊事掃除がかりとで構成されている。 連れて来た赤坊たちは、まず第一の室ですっかり着ているものをぬがされ、互にまだ性別のない体をあどけなく眺めあいながら、体重を計られ、検温され、やがてすっかり・・・ 宮本百合子 「砂遊場からの同志」
・・・無料で健康相談にのって貰え、事情によっては小児科病院へも入れるように計らって呉れる。牛乳配給所との連絡もある。一リットル二十三哥ぐらいで、赤坊の体に必要な処方で調製された牛乳が貰えるのだ。「クララ・ツェトキンの名による産院」には、こうい・・・ 宮本百合子 「モスクワ日記から」
・・・あの長浜へ出る処に小児科病院を開いている男です。前の細君が病気で亡くなって忌中でいると、ある日大きな鯛を持って来て置いて行ったものがあったそうだ。箕村がひどく驚いて、近所を聞き廻ったり何かして騒ぐと、その時はまだ女中でいたお梅さんが平気で、・・・ 森鴎外 「独身」
出典:青空文庫