・・・循環小数の奇妙を知らなかった。動かざる、久遠の真理を、いますぐ、この手で掴みたかった。「つまりは、もっと勉強しなくちゃいかんということさ。」「お互いに。」徹宵、議論の揚句の果は、ごろんと寝ころがって、そう言って二人うそぶく。それが結論で・・・ 太宰治 「もの思う葦」
・・・ この偶然な二つの出来事の合致が起こるという確率は正確には計算しにくいが、とにかく千分の一とか二千分の一とかいう小数である。しかしそういうめったに起こりそうもないことが実際に起こることがあるというのが、確率論のまさしく教えるところである・・・ 寺田寅彦 「藤棚の陰から」
・・・この合理化を非合理化だと叫んでいるのは、英国人の商魂という特殊性を没却した第三インターナショナルの指令のままに誤った戦法を繰返しつつある小数運動者ばかりではないかと。 ――君と私とは心理状態が違う。だからたがいに歩み合って協調しようと云・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫