・・・すると小熊が甘えるように言ったのだ。「どうしても雪だよ、おっかさん谷のこっち側だけ白くなっているんだもの。どうしても雪だよ。おっかさん」 すると母親の熊はまだしげしげ見つめていたがやっと言った。「雪でないよ、あすこへだけ降るはず・・・ 宮沢賢治 「なめとこ山の熊」
・・・ オリオンは高く うたい つゆとしもとを おとす、 アンドロメダの くもは さかなのくちの かたち。 大ぐまのあしを きたに 五つのばした ところ。 小熊のひたいの うえは そらのめぐりの めあて。」・・・ 宮沢賢治 「双子の星」
・・・そんな雑誌としては珍らしい何かの味をもった小篇でその作者の小熊秀雄というひとの名が私の記憶にとどまった。北海道から送られて来る原稿ということも知った。 つづけて二三篇童話がのって、次ぎの春時分の或る日突然その小熊秀雄というひとが家へ訪ね・・・ 宮本百合子 「旭川から」
出典:青空文庫