・・・ 言い終えたところは山猫の檻のまえであった。山猫は青い眼を光らせ、脊を丸くして私たちをじっと見つめていた。佐竹はしずかに腕を伸ばして吸いかけの煙草の火を山猫の鼻にぴたっとおしつけた。そうして佐竹の姿は巖のように自然であった。 ・・・ 太宰治 「ダス・ゲマイネ」
蜘蛛と、銀色のなめくじとそれから顔を洗ったことのない狸とはみんな立派な選手でした。 けれども一体何の選手だったのか私はよく知りません。 山猫が申しましたが三人はそれはそれは実に本気の競争をしていたのだそうです。・・・ 宮沢賢治 「蜘蛛となめくじと狸」
・・・ そして玄関にはRESTAURANT西洋料理店WILDCAT HOUSE山猫軒という札がでていました。「君、ちょうどいい。ここはこれでなかなか開けてるんだ。入ろうじゃないか」「おや、こんなとこにおかし・・・ 宮沢賢治 「注文の多い料理店」
・・・の中扉のカットを挿入 1 どんぐりと山猫山猫拝と書いたおかしな葉書が来たので、こどもが山の風の中へ出かけて行くはなし。必ず比較をされなければならないいまの学童たちの内奥からの反響です。 2 狼森と笊森、盗森人と森・・・ 宮沢賢治 「『注文の多い料理店』新刊案内」
・・・ ね床にもぐってからも、山猫のにゃあとした顔や、そのめんどうだという裁判のけしきなどを考えて、おそくまでねむりませんでした。 けれども、一郎が眼をさましたときは、もうすっかり明るくなっていました。おもてにでてみると、まわりの山は、み・・・ 宮沢賢治 「どんぐりと山猫」
・・・ またそのなかでいっしょになったたくさんのひとたち、ファゼーロとロザーロ、羊飼のミーロや、顔の赤いこどもたち、地主のテーモ、山猫博士のボーガント・デストゥパーゴなど、いまこの暗い巨きな石の建物のなかで考えていると、みんなむかし風のなつか・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・「さあいいが、その山猫はこの栗の木がらひらっとこっちさ遁げだ。鉄砲打ぢはこうぼかげだ。山猫はとうとうつかまって退治された。耳の中にこう云う玉入っていた。」なんてやっていました。そのうちキッコは算術も作文もいちばん図画もうまいので先生・・・ 宮沢賢治 「みじかい木ぺん」
出典:青空文庫