・・・ その桃に向って、行きざまに、ふと見ると、墓地の上に、妙見宮の棟の見ゆる山へ続く森の裏は、山際から崕上を彩って――はじめて知った――一面の桜である。……人は知るまい……一面の桜である。 行くに従うて、路は、奥拡がりにぐるりと山の根を・・・ 泉鏡花 「瓜の涙」
・・・ 二人が立っていたのは山際だった。 交代の歩哨は衛兵所から列を組んで出ているところだった。もう十五分すれば、二人は衛兵所へ帰って休めるのだった。 夕日が、あかあかと彼方の地平線に落ちようとしていた。牛や馬の群が、背に夕日をあびて・・・ 黒島伝治 「渦巻ける烏の群」
・・・そして、日大ギャング事件の山際・左文の公判記事は、大きく写真入りで扱われている。 信濃教育会教育研究所が、小学生の行動について父兄が問題だと考える点を調査したら、「無作法」各学年を通じて七〇%、「根気がない」三年七六%、六年七三%、・・・ 宮本百合子 「修身」
出典:青空文庫