・・・が、万一死なずにいた上、幸いにも教育を受けなかったとすれば、少くとも今は年少気鋭の市会議員か何かになっていたはずである。……「開戦!」 この時こう云う声を挙げたのは表門の前に陣取った、やはり四五人の敵軍である。敵軍はきょうも弁護士の・・・ 芥川竜之介 「少年」
・・・その点でも市会議員の選挙運動などよりはよほど穏やかでいいものである。 政党の宣伝などに行なわるる手段方法については多くを知らないが、いずれにしてもこれは便宜上の動機から来る宣伝で、始めからまじめなものでないから、どちらがどうなっても問題・・・ 寺田寅彦 「神田を散歩して」
・・・そういう時に若干の老人が昔の例を引いてやかましく云っても、例えば「市会議員」などというようなものは、そんなことは相手にしないであろう。そうしてその碑石が八重葎に埋もれた頃に、時分はよしと次の津浪がそろそろ準備されるであろう。 昔の日本人・・・ 寺田寅彦 「津浪と人間」
・・・ただし市会議員のよこしたのだけは紙くずかごに入れるようである。また自分の住所をかかないでよこすのはこの目的を達しないといってこぼしている。ずいぶん勝手なことをいうのである。 そうかと思うとまた彼はこういう気焔を吐く事もある。「ある僕の全・・・ 寺田寅彦 「年賀状」
・・・ 蚊の撲滅 北米バルチモアーでは蚊のためにいろんな病気の流行るのを防ぐために一昨年市会で二万円ほど支出して撲滅にかかったが、結果がよかったので今年また一万円ほど支出したそうである。方法はやはり水溜りに石油を撒き、井・・・ 寺田寅彦 「話の種」
・・・うなずきながら、足首までしろくなったじぶんの足下をみていると、長野がいつもの大阪弁まじりで、秋にある、熊本市の市会議員選挙のことをしゃべっている。深水はからだをのりだすようにして、「そりゃええ、パトロンが出来たなら、鬼に金棒さ、うん――・・・ 徳永直 「白い道」
・・・ 村民の経済事情が悪化し剥脱されてゆく過程、市会議員の利権あさり、官僚的冷血、自然発生的に高まりやがて無気力な怨嗟にかわってゆく村民の心持の推移などを、作者は恐らく実地にあたって調査した上で書いているのであろう。龍三や安江などの性格化、・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・市は赤字だといって市電従業員の賃銀を下げたが市会では暴力までふるって市議歳費値上げを決定した。府の扶助料とりあげの記事が何となし、その実例を読者の脳裡に思い出させるのは何故であろうか。 五 女を殴る 先日、ある・・・ 宮本百合子 「私の感想」
出典:青空文庫