・・・主として年長のピオニェールや、コムソモール、または党外の活動的な分子によって組織される農村通信員は、特におくれた文化の農村生活の中で実に多くの文化的役割を果しつつある。ソヴェト労農通信員の強みは、日常の政治・文化戦線における彼等の建設的実践・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・手に何かプリントをもってその少女と話してる年長のピオニェール少年。芝居行の靴下をはき、オカッパの上へセルロイド櫛をさした若い細君が、時々気にしては新しい藤色フランス縮緬の襟飾に手をやりながら、紺のトルストフカの亭主によりそって四辺を見まわし・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・けれども、その尊ばるべき経験は、いつも年長者の経験のみに限られているのはなぜか、我々の経験をすべて参考として、お前達自身の経験をより深く、より価値のあるものとせよとは、なぜ云われないのか。 ―月―日 あまりに、あまりに婉曲な辞令、便・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・ そして、彼等の中では一番年長者である彼が、皆の背のかげから、僅かの暖みをとるのである。 膝を抱えて小さくうずくまっている禰宜様宮田は、うっとりと、塵くさい大きな肩と肩の間からチロチロと美しく燃える火を見ながら、あてどもない考えに耽・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・その話をきいて、又別の年長の友達が私に一つの漢方薬を教えてくれた。それをのんでいて、いくらかずつおなかのいやな気色を忘れた。 或る時、湯上りに爪を剪っていた。左の指をずっと剪って、右の方になったとき、思い出すともなく思い出して拇指の裏を・・・ 宮本百合子 「鼠と鳩麦」
・・・ ジェルテルスキーは、これまで下手にばかり自分の身を置いてつき合って来た二人の年長の女たちの間に挾まれ、進退谷まった。彼は、二人のどちらにも、世話と云えば世話になったことがあるのであった。マダム・ブーキンは彼女の映画会社へ、餓死しそうに・・・ 宮本百合子 「街」
・・・情感の鈍い、精神の死んだ年長者達と顔をつき合わせておれば、年が若いというだけでも充分溌溂とした女性達は、確に生活が淋しく物足りないに違いない。その感傷が、当人達も自覚しない自然の力にも手伝われて、友達や教師にひどくセンチメンタルな手紙を書か・・・ 宮本百合子 「惨めな無我夢中」
・・・そういう若い女は、現代社会の富の分布の関係から、当然、自分よりずっと年長の男を良人とし、やがて良人は良人として、妻は妻としてそれぞれの形の裏切りを重ねてゆくわけである。 地道な若い下級サラリーマンや、職業婦人の間に、今日はこんな世の中だ・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
・・・すなわち民族全体は、最も小さい子供から最も年長の老人に至るまで、その身ぶり、動作、礼儀などに、自明のこととして明白な差別や品位や優美などを現わしていた。王侯や富者の家族においても、従者や奴隷の家族においても、その点は同じであった。 フロ・・・ 和辻哲郎 「アフリカの文化」
・・・それと同時に彼はまたいずれの茸がより多く尊重せられるかをも仲間たちから学んだ。年長の仲間たちがそれを見いだした時の喜び方で、彼は説明を待つまでもなくそれを心得たのである。 しかしそれは茸の価値が彼の体験でないという意味ではない。教え込ま・・・ 和辻哲郎 「茸狩り」
出典:青空文庫