・・・池はちょっとした中庭にいっぱいになっていて、門の小川の水が表から床下をくぐってこの池へ通い裏田んぼへぬけるようにしてある。大きな鯉、緋鯉がたくさん飼ってあって、このごろの五月雨に増した濁り水に、おとなしく泳いでいると思うとおりおりすさまじい・・・ 寺田寅彦 「竜舌蘭」
・・・なお床下通り二十九番地ポ氏は、昨夜深更より今朝にかけて、ツェ氏並びにはりがねせい、ねずみとり氏の激しき争論、時に格闘の声を聞きたりと。以上を総合するに、本事件には、はりがねせい、ねずみとり氏、最も深き関係を有するがごとし。本社はさらに深く事・・・ 宮沢賢治 「クねずみ」
・・・「はい、ここらのものは病気になるとみんな先生のおうちの床下にはいって療すのでございます。」「すると療るのか。」「はい。からだ中とても血のまわりがよくなって大へんいい気持ちですぐ療る方もあればうちへ帰ってから療る方もあります。」・・・ 宮沢賢治 「セロ弾きのゴーシュ」
ある古い家の、まっくらな天井裏に、「ツェ」という名まえのねずみがすんでいました。 ある日ツェねずみは、きょろきょろ四方を見まわしながら、床下街道を歩いていますと、向こうからいたちが、何かいいものをたくさんもって、風のよ・・・ 宮沢賢治 「ツェねずみ」
出典:青空文庫