・・・このたびの異人は万里のそとから来た外国人であるし、また、この者と同時に唐へ赴いたものもある由なれば、唐でも裁断をすることであろうし、わが国の裁断をも慎重にしなければならぬ、と言って三つの策を建言した。 第一にかれを本国へ返さるる事は上策・・・ 太宰治 「地球図」
・・・ 争議が解決した後も、いっその事思い切って従業員の制服を全廃して思い思いの背広服ないし和服着流しにする事を電気局に建言したらどうかと思ってみたのであった。 十 このごろ、熱帯魚を売る店先を通るときはたいていい・・・ 寺田寅彦 「破片」
・・・しかるに明治年間ある知事の時代に、たぶん机の上の学問しか知らないいわゆる技師の建言によってであろう、この礁が汽船の出入りの邪魔になると言ってダイナマイトで破砕されてしまった。するとたちまちどこからとなく砂が港口に押し寄せて来て始末がつかなく・・・ 寺田寅彦 「藤棚の陰から」
出典:青空文庫