・・・『八犬伝』もまた末尾に近づくにしたがって強弩の末魯縞を穿つあたわざる憾みが些かないではないが、二十八年間の長きにわたって喜寿に近づき、殊に最後の数年間は眼疾を憂い、終に全く失明して口授代筆せしめて完了した苦辛惨憺を思えば構想文字に多少の倦怠・・・ 内田魯庵 「八犬伝談余」
・・・をすぎてはほとんどダメで、いかなる強弩もその末は魯縞をうがちえず、壮時の麒麟も、老いてはたいてい駑馬にも劣るようになる。 力士などは、そのもっともいちじるしい例である。文学・芸術などにいたっても、不朽の傑作といわれるものは、その作家が老・・・ 幸徳秋水 「死刑の前」
・・・を過ぎては殆どダメで、如何なる強弩も其末魯縞を穿ち得ず、壮時の麒麟も老いては大抵驢馬となって了うのである。 力士の如き其最も著しき例である、文学・芸術の如きに至っても、不朽の傑作たる者は其作家が老熟の後よりも却って未だ大に名を成さざる時・・・ 幸徳秋水 「死生」
出典:青空文庫