・・・もしこれが後日、何か雑誌にでも掲載された場合、太宰はキザな奴だ、キリスト気取りで、あのヨハネ伝の弟子の足を洗ってやる仕草を真似していやがる、げえっ、というような誤解を招くおそれなしとしないので一言弁明するが、私はただはだしで歩いている子供の・・・ 太宰治 「美男子と煙草」
・・・ このほか三通、気にかかっている書簡があるのだけれど、それらに就いては後日、また機会もあろう。追記。文芸冊子「非望」第六号所載、出方名英光の「空吹く風」は、見どころある作品なり。その文章駆使に当って、いま一そう、ひそかに・・・ 太宰治 「もの思う葦」
・・・先日のモデルの後日談をも聞いてみたかったのである。玄関の呼鈴を押したら、出て来たのは、あのひとである。先日のモデルである。白いエプロンを掛けている。「あなたは?」私は瞬時、どぎまぎした。「はあ。」とだけ答えて、それから、くすくす笑い・・・ 太宰治 「リイズ」
・・・それが二、三ヶ月後くらいに新聞の広告に大きく名前が他の諸先輩と並んで出て、それが後日第一回芥川賞の時に候補に上げられました。 その「逆行」と殆ど前後して同人雑誌「日本浪曼派」に「道化の華」が発表されました。それが佐藤春夫先生の推奨にあず・・・ 太宰治 「わが半生を語る」
・・・ この理想が実現せられるとして、教案を立てる際に材料と分布をどうするかという問に対しては、具体的の話は後日に譲ると云って、話頭を試験制度の問題に転じている。「要は時間の経済にある。それには無駄な生徒いじめの訓練的な事は一切廃するがい・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・それで、これも不思議な錯覚の一例として後日の参考のためについでに書添えておくこととする。 寺田寅彦 「ある探偵事件」
・・・その時に心づいた事を後日のための備忘録としてここに書き止めておきたいと思う。ことによるとこんな事はもうとうにだれかが言いふるした陳腐な議論かもしれない。もしそういう文献に通じた読者があったら教えを請いたいと思うのである。 私の調べてみた・・・ 寺田寅彦 「浮世絵の曲線」
・・・これは監督苦心の産物かもしれないが、効果は遺憾ながらあまり上乗とは思われない。後日「モロッコ」を作る場合にはこの道化師までもみんないっしょに太鼓とラッパの音の中へたたき込んでしまったものと思われる。 俳諧連句については私はすでにしばしば・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ この作業仮説の正否を吟味しうるためには、われわれは後日を待つほかはない。もし他日この同じ地方に再び頻繁に地鳴りを生ずるような事が起これば、その時にはじめてこの想像が確かめられる事になる。しかしそれまでにどれほどの歳月がたつであろうかと・・・ 寺田寅彦 「怪異考」
・・・風邪を引いた代りにレーリーがずいぶん骨身にしみて後日の役に立った。 楽しみに学問をするというのはいけないことかもしれないが、自分はどうも結局自分の我儘な道楽のために物理学関係の学問をかじり散らして来たものらしい。尤も、そうすることによっ・・・ 寺田寅彦 「科学に志す人へ」
出典:青空文庫