・・・ しかし童貞を尊び、志向を純潔にし、その精神に夢と憧憬とを富ましめるということは、青年の恋愛にとって欠くべからざる心がけである。 五 相互選択と男性のイニシアチヴ 青年男女はその性の選択によって相互に刺激し合い、・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・ われわれは生の探求に発足した青年に、永遠の真理の把握と人間完成とを志向せしめようと祈願するとき、彼らがいずれはその理性知を揚棄せねばならぬことを注意せざるを得ず、またその読者の選択を合理的知性に対応する方向のみに向けしむることは衷心か・・・ 倉田百三 「学生と読書」
・・・心霊の高貴とか、いのちの不思議とかいうようなものは、物質を超越しようとする志向の下に初めてなりたつ事柄で、物的条件をエキスキュースにしだしては死滅してしまうのである。だから前回に述べたような現実の心づかいは実にやむを得ない制約なので、恋愛の・・・ 倉田百三 「女性の諸問題」
・・・いわんや、その性善にして、その志向するところ甚だ高遠なるわが黄村先生に於いてをやである。黄村先生とは、もとこれ市井の隠にして、時たま大いなる失敗を演じ、そもそも黄村とは大損の意かと疑わしむるほどの人物であるけれども、そのへまな言動が、必ずわ・・・ 太宰治 「花吹雪」
・・・からはじまる続篇を貫いて志向されているのは、ストリップ・ショウ風ののたうちはないといえ、つまりは日本の社会の一つの時期に生きる人間、女の、意識の覚醒の課題であり、それは、とりも直さず個人と集団を貫くコンプレックスの発見とそこから解放されよう・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・著者の社会的判断の志向の責任もおのずから含まれているのである。「学生の生態」という題は、これに比べて濡れたガラスの面にさわるような感触を与える。外囲の或る条件のもとに自然物としての生物は変化する、その変化を客観的に観察する、生態学となそ・・・ 宮本百合子 「生態の流行」
・・・そのことによって、ひとを発見し、それぞれにちがいをもちながら共通なよりよい人生への志向を発見するのだ。 わたしたちがきょう青年の生の記録として、「きけわだつみのこえ」と「生き残った青年達の記録」をもち、更にこういう「わたしたちも歌える」・・・ 宮本百合子 「小さい婦人たちの発言について」
・・・この志向だけについて言えば別に問題はありません。これが真の自己を生かせる道ですから。 しかし私は自己を育てようとする努力に際して、この努力そのものがイゴイズムと同じく愛を傷うことのあるのを知りました。私は仕事に力を集中する時愛する者たち・・・ 和辻哲郎 「ある思想家の手紙」
出典:青空文庫