・・・意気天を衝く。怒髪天をつく。炳として日月云々という如き、こういう詞を古人は盛に用いた。感激的というのはこんな有様で情緒的教育でありましたから一般の人の生活状態も、エモーショナルで努力主義でありました。そういう教育を受ける者は、前のような有様・・・ 夏目漱石 「教育と文芸」
・・・に知己の語にあらず、その昔本国にあって時めきし時代より天涯万里孤城落日資金窮乏の今日に至るまで人の乗るのを見た事はあるが自分が乗って見たおぼえは毛頭ない、去るを乗って見たまえとはあまり無慈悲なる一言と怒髪鳥打帽を衝て猛然とハンドルを握ったま・・・ 夏目漱石 「自転車日記」
・・・ 異教徒席の中から赭い髪を立てた肥った丈の高い人が東洋風に形容しましたら正に怒髪天を衝くという風で大股に祭壇に上って行きました。私たちは寛大に拍手しました。 祭司が一人出てその人と並んで紹介しました。「このお方は神学博士ヘルシウ・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・日本も、軍事的行動に於て所謂怒髪天を衝く態に猛勇なばかりでなく、文華の面でこのように独自であり、政府もその評価に吝でないという一つのジェスチュアとして、アカデミーもつくられる一つの時代的必然があるのである。しかも、その一部の必要、必然と今日・・・ 宮本百合子 「矛盾の一形態としての諸文化組織」
出典:青空文庫