・・・第三に、八月上旬、屋敷の広間あたりから、夜な夜な大きな怪火が出て、芝の方へ飛んで行ったと云う。 そのほか、八月十四日の昼には、天文に通じている家来の才木茂右衛門と云う男が目付へ来て、「明十五日は、殿の御身に大変があるかも知れませぬ。昨夜・・・ 芥川竜之介 「忠義」
・・・ 私はまた倒れました。 怪火に映る、その大滝の雪は、目の前なる、ズツンと重い、大な山の頂から一雪崩れに落ちて来るようにも見えました。 引挫がれた。 苦痛の顔の、醜さを隠そうと、裏も表も同じ雪の、厚く、重い、外套の袖を被ると、・・・ 泉鏡花 「雪霊続記」
・・・北山の法経堂に現れる怪火の話とか、荒倉山の狸が三つ目入道に化けたのを武士が退治した話とか、「しばてん」と相撲を取る話。「えんこう」(河童を釣る話とかいう種類のものが多かった。一例として「えんこう」の話をとると、夕涼みに江ノ口川の橋の欄干に腰・・・ 寺田寅彦 「重兵衛さんの一家」
・・・誰が、どこでこね上げる計画なのかわからないが、山とつまれている未解決の社会問題を燃きつけにして怪火を出して、一般の人々が判断を迷わされているすきに、だから武装警察力を増大しなければならない、これだから、日本の平和のためにはより強大な武力の保・・・ 宮本百合子 「わたしたちには選ぶ権利がある」
出典:青空文庫