・・・ ついでに宇野浩二氏の『子の来歴』についても一言生活としての例を挙げるとすると、この作も私は人々のいう如く感心をし、見上げた作品だと思ったが、しかし、この作品には、もっとも大切な親心のびくびくした感情というものは少しも出ていないように思・・・ 横光利一 「作家の生活」
・・・それに感情が鋭敏過ぎて、気味の悪いような、自分と懸け離れているような所がある。それだから向うへ着いて幾日かの間は面倒な事もあろうし、気の立つような事もあろうし、面白くないことだろうと、気苦労に思っている。そのくせ弟の身の上は、心から可哀相で・・・ 著:リルケライネル・マリア 訳:森鴎外 「白」
・・・ 私は自分の思想感情がいかに浮ついているかを知りました。私が立派な言葉を口にするなどは実におおけない業です。罵っても罵っても罵り足りないのはやはり自分の事でした。四 私は道徳をただ内面的の意義についてのみ見ようとしていま・・・ 和辻哲郎 「ある思想家の手紙」
出典:青空文庫