・・・大部分が戦災をうけ、親を失っている。淫売によって生きなければならない若い女の暮しぶりが、まるで民主日本のシムボルであるかのように描かれ、うつされ、ゴシップされている。 性の解放がジャーナリズムの上に誇張されているのに、現実の恋愛もたのし・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・ 沢山の学校が戦災を蒙りました。そのために校舎が無くなったところもあります。大変不自由な一時凌ぎの場所で、この寒い冬を迎えて勉強してゆかなければならない人も、どっさり在りましょう。学校どころか、家が戦災で失われた方々も少くないでしょう。・・・ 宮本百合子 「美しく豊な生活へ」
それを見たことで その人の人生に何かが加わり 或は何かが変る丈の力がなくては 観光の対象として極めて薄弱だ。「戦災のあとも見て貰って 十分満足させて」云々。これは心ある日本人をして 何となくばつの悪い思いをさせた。日本・・・ 宮本百合子 「観光について」
・・・しかも一応六年を終った年ごろで親の役に立つようになった子供は買出しの手つだいにも行ったりして困難な日々のやりくりにまきこまれ時間がない。戦災者、復員者、引揚者みんな困窮している人々は六年を終った子供を生計のための助手にしなければやりきれない・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・戦争や戦災で家を失い、又は夫を失って、実家へ子供を連れて帰って来た女の兄弟達の日暮しをみて、若い人々は、女の一生というものをどう思って眺めるだろう。長男の家族的な負担の重さは、長男という身分に生れあわせた青年達の自由さと身軽さと自分で選ぶ人・・・ 宮本百合子 「青年の生きる道」
・・・すべての交戦国にとって銃後というものは存在しなくなった。戦災という言葉は戦争によってひきおこされた輪の外での災難を意味してつかわれているようだけれども、そして、なにか附随的な現象であり、それは、のがれたものとのがれられなかったものとは本人た・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・ 世界に何千何万人の未亡人がいるか、孤児がいるか、戦災者がいるか、この人たちはみんな戦争を欲していません。 この社会を発展させようとしている世界の婦人は戦争を欲していない、彼女たちの涙がそれを教えました。 世界民主婦人連盟は八千・・・ 宮本百合子 「世界は平和を欲す」
・・・田村泰次郎氏の肉体主義は彼にりっぱな邸宅を買わせたと新聞に出ました。戦災者や引揚者が住むに家なく警察の講堂に検束される形でやっと雨露をしのぐ有様が一方にあるのに。 第三は、インテリゲンチャの間から野間宏、椎名麟三、中村真一郎氏その他の作・・・ 宮本百合子 「一九四七・八年の文壇」
・・・そして今日生活の荒波にもまれている八〇〇余万の戦災者。夥しい引揚者と復員者。六〇万人以上の未亡人と一二万人の孤児と六〇万の戦争による不具者とが生じたのであった。 第二次世界大戦の間じゅう、他の諸国ではその恐しい戦争の底を縫って、国際的な・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・二十万人の戦傷不具者・二十万人以上の戦争未亡人、数しれない戦災者たちは、ひきちぎられ、根こそぎされた自身の生活権について、日本のファシズムこそ敵であったという事実を、どこまできもに銘じているだろうか。 米鬼を殺せ! と一頁ごとに刷ってあ・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
出典:青空文庫