・・・ しかし農民と、工場プロレタリアとは、その所属する階級がちがっている。そしてプロレタリア文学が「前衛の立場に立って物を覗、かつ描く」という根本的な方針が、既に、一年前に確立され、質的飛躍の第一歩がふみだされているとき、工場労働者とはちが・・・ 黒島伝治 「農民文学の問題」
・・・は、日露戦争に、満洲で脚気のために入院した兵卒が、病院の不潔、不衛生粗食に堪えかねて、少しよくなったのを機会に、病院を出て、自分の所属部隊のあとを追うて行く。重い脚を引きずって、銃や背嚢を持って終日歩き、ついに、兵站部の酒保の二階――たしか・・・ 黒島伝治 「反戦文学論」
・・・果してそうならば、私もいまから自分の所属を分明にして置く必要がある。母と子とに等分に属するなどは不可能な事である。今夜から私は、母を裏切って、この子の仲間になろう。たとい母から、いやな顔をされたってかまわない。こいを、しちゃったんだから。・・・ 太宰治 「メリイクリスマス」
・・・ 政府の所属で、各種科学の特殊な専門的題目の研究所として看板をかけた処では、比較的にいくらか自由である。しかし、例えば蚯蚓の研究所で鯨の研究をやりたいといったような場合には、ともかくも一応上長官の諒解を得るために、その研究の結果がその研・・・ 寺田寅彦 「学問の自由」
・・・維新前には藩の調練場であったのが、そのころは県庁の所属になったままで荒れ地になっていた。一面の砂地に雑草が所まだらにおい茂りところどころ昼顔が咲いていた。近辺の子供はここをいい遊び場所にして柵の破れから出入りしていたがとがめる者・・・ 寺田寅彦 「花物語」
・・・船の名はシビリアコフ号、これがソビエト政府の北氷洋学術研究所所属の科学者数名を載せて北氷洋をひと夏に乗り切ったものであるということが新聞で報ぜられた。それでもわれわれはまだかの有名なバラバラ事件の解決以上の興味を刺激されることもなくて実にの・・・ 寺田寅彦 「北氷洋の氷の割れる音」
・・・停車場及鉄道線路の敷地となった処には維新前には下寺と呼ばれた寛永寺所属の末院が堂舎を連ねていた。此処に停車場を建てて汽車の発着する処となしたのは上野公園の風趣を傷ける最大の原因であった。上野の停車場及倉庫の如きは其の創設の当初に於て水利の便・・・ 永井荷風 「上野」
・・・各隊ノ女子ハ個々七宝焼ノ徽章ヲ胸間ニ懸ケ以テ所属ノ隊ト番号トヲ明示ス。三隊ノ女子日ニ従テ迎客ノ部署ヲ変ズ。紅緑ノ二羣楼上ニ在ルノ日ハ紫隊ノ一羣ハ階下ニ留マルト云フガ如シ。楼上ニハ常ニ二隊ヲ置キ階下ニハ一隊ヲ留ムルヲ例トス。三隊互ニ循環シテ上・・・ 永井荷風 「申訳」
・・・諸君のうちの希望者は、けだしいつもの例により、そのノートをば拙者に示し、さらに数箇の試問を受けて、所属を決すべきである。」学生たちはわあと叫んで、みんなばたばたノートをとじました。それからそのまま帰ってしまうものが大部分でしたが、五六十人は・・・ 宮沢賢治 「グスコーブドリの伝記」
・・・総数四六四名の代議士が、各自所属している政党を眺めても、これは一目瞭然であろう。自由党 一三六名 五名 計 一四一名進歩党 八七名 六名 九三名社会党 八四名 八名 九二名協同党 一四名 ナシ ・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
出典:青空文庫