・・・こんどもこうして山へはいれば、きつねか、おおかみか、大ぐまをしとめて、土産にするから、どうか私の手並を見ていてもらいたいものだ。」と、大口をききました。 これにひきかえて、母子のくまを打たずにもどったやさしい猟人は、どうか、はやく、あの・・・ 小川未明 「猟師と薬屋の話」
・・・今に手並を見せると云う風で。 野菊が独り乱れている。「精ドーダ面白いか。」「あつい」と云いつつ藁帽をぬいで筒袖で額を撫でた。「サーそろそろ行きましょう。モット下へ行って見ましょ。」小津神社の裏から藪ふちを通って下へ下へと行く。ところどこ・・・ 寺田寅彦 「鴫つき」
・・・おぬしが槍の手並みを見に来た」「ようわせた。さあ」 二人は一歩しざって槍を交えた。しばらく戦ったが、槍術は又七郎の方が優れていたので、弥五兵衛の胸板をしたたかにつき抜いた。弥五兵衛は槍をからりと棄てて、座敷の方へ引こうとした。「・・・ 森鴎外 「阿部一族」
・・・思い出しても二方(新田義宗と義興の御手並み、さぞな高氏づらも身戦いをしたろうぞ。あの石浜で追い詰められた時いとう見苦しくあッてじゃ」「ほほ御主、その時の軍に出なされたか。耳よりな……語りなされよ」「かたり申そうぞ。ただし物語に紛れて・・・ 山田美妙 「武蔵野」
出典:青空文庫