・・・小指のさきほどの打身があった。淡いふすぼりが、媼の手が榊を清水にひたして冷すうちに、ブライツッケルの冷罨法にも合えるごとく、やや青く、薄紫にあせるとともに、乳が銀の露に汗ばんで、濡色の睫毛が生きた。 町へ急ぐようにと云って、媼はなおあと・・・ 泉鏡花 「神鷺之巻」
・・・お節は額と打ち身の所に濡れ手拭をのせて足をさすったり、手を撫でたりして居たが、手にさえ感じられる熱の高さにびっくりして医者を迎えに行ってもらうために、一番近い家まで裾をからげて走って行った。そこの若い者に用向を話すとすぐ、年を取った女と思え・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・一、馬から落ちたところが打身内攻し足が引つれ、苦しむ。一、六年間床についたきり。一、恢復して伝道、〔欄外に〕Leading passion for Utari. 周囲の人 母 好人物 ドメステ・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
出典:青空文庫