・・・男と女を人民という名にくるめてこれまで抑圧してきた歴史を、根柢から新しく喜ばしいものに変えてゆこうとするために人民として協力してゆくのだと思う。〔一九四七年九月〕 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・すべての人々に訴えるこれらのたたかいの成果におそれて、労働組合、言論機関、芸能人ばかりでなく、教授と学生への思想抑圧、レッド・パージがおこった。文部、法務、特審関係、どこを見てもその指導的地位にいるものは、大学の第何期生かであり先輩である。・・・ 宮本百合子 「新しいアカデミアを」
・・・日本の中には釈放された有力な戦争協力者たちが暗躍していて、この一年間に人民に対する抑圧とアジアの解放を妨げる仕事がある時はこっそりと、ある時は公然と法律をふりかざして行われてきています。 アジアの姉妹たちよ。わたしたち日本の婦人は、また・・・ 宮本百合子 「新しいアジアのために」
・・・そして自分に即さず一つの社会的な事実としてこの事を観察すると、私は、日本の現在の階級対立のけわしさや、そのきびしい抑圧の中からも何かの可能性をひき出し、たとえ半歩たりとも具体的に前進しようとする階級の、いよいよ強靭にされる連帯性、積極性の大・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・ ファシズムというと、わたしたちはすぐ戦争中のままの形で超国家的な大川周明の理論や、憲兵の横暴や、軍部、検事局その他人民を抑圧した天皇制の機構全体を頭にうかべて、なんとなしその全体に体当りで抵抗するのがファシズムへの抵抗という感じをもっ・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・戦争中、非人間的な抑圧に呻いていた気分の反動で、すべての人間としての欲望をのばしたい衝動がある。その半面、経済的な社会生活の現実では、その激しい衝動を順調にみたしてゆく可能が奪われているから、虚無的な刹那的な官能のなかに、生存を確認する、と・・・ 宮本百合子 「新しい文学の誕生」
・・・の原稿は、日本の言論抑圧の標本として、赤鉛筆の姿をそのまま、いつか多くの人の目にふれる機会をもつだろう。「朝の風」という作品は、作者が心いっぱいにもっている思いを、そのまま自然に表現の出来ないために、まるで猿ぐつわのすき間から洩れる声の・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第五巻)」
・・・ファッシズムに対して文化を擁護し、新しいヒューマニズムに向って能動であろうとする人々が、自身の文化を抑圧し、運動を骨ぬきとする自分の国のファッシズムそのものとのたたかいは、極力回避しなければならなかったというのは、何という呪うべき矛盾であっ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・ また一九四一年にはいってからは、ほんの断片的な執筆しかなくて、それも前半期以後は全く途絶えてしまっているのは、一九四一年の一月から太平洋戦争を準備していた権力によってはげしい言論抑圧が進行し、宮本百合子の書いたものは、批判的であり、非・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・三年前は、主として内務省がその仕事をやったものであったが、四一年には、情報局がこの抑圧の中心になった。噂では、けがらわしいリスト調製に無関係ではないと話される作家さえもあった。 アメリカへの戦争準備を強行中の軍事力は専断のかぎりをつくし・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
出典:青空文庫