・・・「高利貸に投資するつもりか」私は皮肉った。「莫迦をいえ。金を借りるんだ」「家でも買う金が足りないのか」「からかっちゃ困るよ。闇屋に二千円借りたんだが、その金がないんだ」「二千円ぐらいの金がない君でもなかろう。世間じゃ君が・・・ 織田作之助 「鬼」
・・・ ト屋根ヤブレルホドノ大喝采、ソレモ一瞬ノチニハ跡ナク消エル喝采、ソレガ、ホシクテ、ホシクテ、一万円、二万円、モットタクサン投資シタ。昔、昔、ギリシャ詩人タチ、ソレカラ、ボオドレエル、ヴェルレエヌ、アノ狡イ爺サンゲエテ閣下モ、アア、忘レルモ・・・ 太宰治 「走ラヌ名馬」
・・・その投資を出来るだけ利まわりよく回収するためには、一冊の雑誌が高くてもどっさりうれるようにしなければならず、売れる、ということのためには、日本の人口の大部分を占める人々――大衆のこのみに合うことが必要となって来る。大衆のこのみとはどういうも・・・ 宮本百合子 「新しい文学の誕生」
・・・文化・芸術の結実は、そのものとして人民に愛され、貴ばれる本質から変化させられて商品化し、投資の対象と化して来ているのである。 第二次世界大戦まで、パリは芸術の都と云われて来た。それは、ヨーロッパにおいてのフランスが、封建時代からより進ん・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・彼らはそういうものに投資しております。そこに機械をおき道具を設備して建物をもち土地をもって、そして人を雇って賃金を払うというように、全部の生産の手段は自分達でもっております。すべてを自分達だけでもっているごく少数の非常に富んだ人達がいるわけ・・・ 宮本百合子 「幸福の建設」
・・・ ドンバスに外国資本が投資されていた帝政時代から働いていたドンバスのドイツ人技師が中心であった。 一九二九年八月、東支鉄道の問題で、中国の帝国主義者たちを突ついたのはどの国だ? フランスと結托している反動的なポーランドがワルソーのソヴェ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・の主人公のように、将来の負担者として投資されて、家じゅうで只一人の大学出として教育され、知識人となっている。勤労家庭から長男が立身して、「皆を楽にさせた」時代はとうに過ぎているから、そのような経済的根拠に立って知識人となった青年たちの或るも・・・ 宮本百合子 「全体主義への吟味」
・・・地方的な小政党であったナチスを一九三三年の選挙で第一党にした背後の力は、国内では軍需生産企業の親玉たちと保守的な国家主義者・軍人・地主たち、判断にまよった小市民層の人々であり、国外においてはナチスに投資した外国の資本家たちであった。小さかっ・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・の書評であり、資本主義国家が第一次大戦後欧州の社会主義化をおそれて、ナチスに投資したことがどれほどの悲劇を招く原因となったかということ、また、ジュール・ロマンの「善意の人々」は理性的な方法を知らなかったために、どんなに善意を翻弄されたかとい・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・ 二 なるほど、ブルジョア文学には、投資者、消費者としてのブルジョアのヨーロッパ化した日常生活とともに盛に国際的要素が加わって来た。現に菊池寛が書いている連載小説「勝敗」の中では一回分がフランス化粧料の名、・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
出典:青空文庫