・・・ 読者はこの作家の実行運動において最も拙劣な、機械的なオルグを見るのである。強制献金のための村の衆の集りに出て、アジ・プロしようという機会そのものの積極的なとらえかたは、間違った方法によって失敗に帰したのだが、僕というプロレタリア作家は・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・相互関係は、伸子がまだそこにある社会生活を総括して政治的なその根元からつかめず、次々に接触する事物からの感銘や批判を摂取して目に見えず内面変革にすすんでゆく、その段階においてとらえられているのである。拙劣に扱われているかもしれないが、伸子と・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・使徒パウロからユダヤ人サウルへの拙劣な転身をした。驚くほど破廉恥な諸矛盾をその本の中にさらけ出している。党及び政府の一般的な方針に反対する批判の権利だけを認めているジイドは、ソヴェト内でトロツキイストたちの大ぴらな声をきくことが出来ないのを・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・ 民主的出版物の編集が、ひとり合点で、不馴れであるし拙劣である上に、第三者に真の努力を感じさせるだけの迫力を欠いているということは、出版文化委員会の席上で、しばしば発言されたことであった。出版の仕事は客観的な現実のうちにさらされている事・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・うんと陳腐な所謂変態心理と性慾を、最も拙劣な筋書きで見せてる。 ――レヴューは? ――ソヴェト式レヴューがあるよ。 ――オペレットは? ――ある。でも、やっぱりソヴェト式だ。 ――……ついでだから、どうだい一つ見て来た芝・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・とか、政府への反抗に先手をうつつもりで、かなり拙劣に人々の気分を不安にする空気をつくった。下山事件はその典型であった。下山事件につづいておこった三鷹の無人電車暴走、そしてそのことが思いがけない犠牲者を出した事件については、こんにちでもまだわ・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・その後あらわにしたように、現実からの逃避や、主観的観念性、幻想の壤土となるからである。現実での暴虐、流血を神秘主義に色どって、その強烈さで、理性を麻痺させることは、ヒトラーの方式であった。その拙劣な真似に、日本の軍部の方式があった。「暁に祈・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
出典:青空文庫