・・・ 六月十日木戸一郎 井原退蔵様 拝復。 先日は、短篇集とお手紙を戴きました。御礼おくれて申しわけありませんでした。短篇集は、いずれゆっくり拝読させて戴くつもりです。まずは、御礼まで。草々。 十八日井・・・ 太宰治 「風の便り」
師走上旬 月日。「拝復。お言いつけの原稿用紙五百枚、御入手の趣、小生も安心いたしました。毎度の御引立、あり難く御礼申しあげます。しかも、このたびの御手簡には、小生ごときにまで誠実懇切の御忠告、あまり文壇・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・ ――拝復。貴翰拝読いたしました。ひとにものを尋ねる時には、も少していねいな文章を書く事に致しましょう。小国民の教育をなさっている人が、これでは、いけないと思いました。 御質問に、まじめにお答え致します。私はいままで、ダダイズムを自・・・ 太宰治 「新郎」
・・・ この奇異なる手紙を受け取った某作家は、むざんにも無学無思想の男であったが、次の如き返答を与えた。 拝復。気取った苦悩ですね。僕は、あまり同情してはいないんですよ。十指の指差すところ、十目の見るところの、いかなる弁明も成立し・・・ 太宰治 「トカトントン」
・・・「拝復。四日深夜附貴翰拝誦。稿料の件は御希望には副えませんが原稿は直ちに御執りかかり下さる様お願い申します。普通稿料一円です。先ずは御返事まで。匆々。『秘中の秘』編輯部。」「お葉書拝読。四日深夜、を、ことさらに引用して、少し・・・ 太宰治 「二十世紀旗手」
・・・「拝復。お手紙をいただきました。御支持をありがたく存じます。また、この前のお手紙も、たしかに拝誦いたしました。私は今日まで人のお手紙を家の者に見せて笑うなどという失礼な事は一度も致しませんでした。また友達に見せて騒いだ事もございません。・・・ 太宰治 「恥」
拝復。長いお手紙をいただきました。 縁というのは、妙なものですね。あなたも作家、私も作家、けれども今まで一度も逢った事は無し、またお互いにその作品を一度も読んだ事のない者どうしが、ふっとした事で、こうして長い手紙を交換・・・ 太宰治 「返事」
拝復。島木さんの事について何か書くようにとの御手紙を頂きましたので、考えてはみましたが、私は同氏から稀に御手紙は頂戴しておりましたものの、御目にかかったのは前後にただ一度だけ、それも宴会の席上でちょっと御挨拶をしたばかりで・・・ 寺田寅彦 「書簡(1[#「1」はローマ数字1、1-13-21])」
拝復。始終『アララギ』を送って頂いておりながらほんの時々しか読んでいないので甚だすまない気がしております。今度二十五周年記念号を出すので何か書くようとの懇篤な御すすめがありましたので何かと考えてみましたが右様の次第でありま・・・ 寺田寅彦 「書簡(2[#「2」はローマ数字2、1-13-22])」
出典:青空文庫