・・・世の中のひとが、もし、あの人を指弾するなら、おれは、どんなにでもして、あのひとをかばわなければならぬ。あの女は、いいひとだ。それは、おれが知っている。信じている。 こんどのことは? ああ、いけない、いけない。おれは、笑ってすませぬのだ。・・・ 太宰治 「姥捨」
・・・好人物と言われて笑われ、ばかと言われて指弾され、廃人と言われて軽蔑されても、だまってこらえて待っていた。どんなに、どんなに、待っていたか。」 言っているうちに涙がこぼれ落ちそうになったので、あわてて部屋の外に飛び出した。 男爵がその・・・ 太宰治 「花燭」
・・・この男を神は、世の嘲笑と指弾と軽蔑と警戒と非難と蹂躙と黙殺の炎の中に投げ込んだ。男はその炎の中で、しばらくもそもそしていた。苦痛の叫びは、いよいよ世の嘲笑の声を大にするだけであろうから、男は、あらゆる表情と言葉を殺して、そうして、ただ、いも・・・ 太宰治 「答案落第」
・・・味方の手には、あらゆる殺戮の武器を与えようとするこの種の平和運動者を指弾するらいてう氏の警告にはこのようにして事実の裏づけが見出されるのである。きょうの現実の間で「二つの世界」をいうならば、それは一方に真実世界平和のために努力しつつある人々・・・ 宮本百合子 「平和の願いは厳粛である」
出典:青空文庫