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・・・万源という料理屋の二階から酔客の放歌が聞える。二人は何というわけとも知らず、その方へと歩み寄ったが、その時わたしはふと気がついて唖々子の袖を引いた。万源の向側なる芸者家新道の曲角に煙草屋がある。主人は近辺の差配で金も貸しているという。わたし・・・
永井荷風
「梅雨晴」
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・・・クヤクヤ貴様は何じゃ、往来で大声放歌はならんちゅう位の事は心得て居るじゃろう。どうも恐れ入りましてございます。恐れ入ったではいかんじゃないか。恐れ入りましてございます。貴様姓名は何というか。へ私は神田八丁堀二丁目五十五番地ふくべ屋呑助と申し・・・
正岡子規
「煩悶」